帳中

□月出
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 なだらかな背骨の弓隆をなぞり、双丘のくぼみ、最も秘められた箇所をまさぐる。
「っ…ぅ…」
 ぞわりと下肢を走る感触に、公孫瓚は思わず身をよじった。
 されるがまま体をあずけていた彼の、ほんの少し、ためらうような、僅かな抵抗。
 抱かれることに慣れているのだと。
 そう思われることが、苦痛なのだ。彼にとって。
 そうと解っていても、止められない、止めるつもりもない。
 誰に抱かれていようが、そんなものは関係ない。
 唯ただ、目の前の男が愛しい。
 それだけだ。
「伯珪…」
 熱っぽく囁く陳琳の、赤く燃えるような眼差しが請い願っている。
「…ぁ…孔、璋…」
 強まる抱擁に、公孫瓚は泣きそうに表情を歪めた。
 この男の思いが欲しい。
 どこまでも深く捕らえて離さず、壊れるほどに愛して欲しい。
 それでも、頑なな矜持が心の片隅にうずくまる。
 拒むような仕草を見せてしまったのに、今更どうして、素直に身を任せられるだろうか、と。

 逡巡を断ち切るように、濡れた長い指が体を割り開いた。
「あ…っぅ…!」
 奥まで潜り込む痛みに、公孫瓚は思わず身をよじる。
 だが、今度は、陳琳は待ってくれなかった。
 いっそ荒々しいほどの動きで体の中を押し広げられる、息苦しさ。
 それでも、触れられてしまえば、あとは際限のない悦楽に滑り落ちるだけ。
 沈黙に対する苛立ちなのか、陳琳の指は酷く激しく公孫瓚を犯した。
「…ぁっ…あ、あ、…ああっ!」
 ため息のように細い声が、確かな愉悦の喘ぎを漏らす。
 小刻みに揺れる銀の髪が、愛撫とは別の、快感にもだえる肢体の動きを伝えてきた。
「愛している」
 腕の中で喘ぐ人に囁く。
「愛している、伯珪」
 すると、唇が優しくふさがれる
「俺も…いとしい…」
 頬を紅く上気させて、公孫瓚が笑っていた。
 いっそ淫蕩なほど熱く潤んだ表情は、しかし、どこまでも清らかに美しい。
「伯…珪…」
 愛撫にわななく唇を貪り、とろけるような唾液の熱さに喉が鳴る。
 震える体を支えんと、縋るようにしがみついてくる、体の、肌の熱さ。

 抱いても、いいのだろうか。

「いいぞ」
 はっと見つめ直す鮮やかな赤に、淡い色の瞳が優しくうなづいた。
それが、全てだった。



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