熱い皮膚を刺しつらぬいたとき、初めて、眼下の人が己のものになったと感じた。 薄い皮膜まで吸い付く粘膜の温かさ。 熱の塊を受け止めようとする肉の蠢き。 その全てが、ただ自分のゆえに生まれているのだ。 「伯珪…」 圧倒的な快感に声がかすれた。 欲望のまま弾む腰が、引き締まった肉体を揺さぶる。 「っふ…ぅ、あ…あっ…」 恥じらうように唇を噛み、切れぎれに漏れる声が悩ましい。 ひそめられた眉の美しさに目を奪われたとき、ひときわ激しい何かが、荒々しく陳琳を突き動かす。 「あぁっ…!ゃ、ぁ…やめ…ッ…あ、あぁ…こ、ぅ…っ…!」 身もだえるたび、長い髪があでやかな銀色にきらめく。 「綺麗だ…きれいだ……伯珪…俺の…」 かぶりを振れば、月の入りの空のような銀の髪が揺らめいた。 「ぁ…んっ…孔、璋…」 白い月光と柔らかな灯火に、赤く上気した頬が照らし出される。 きつくつむられた眦に盛り上がる涙へ、なだめるように唇を寄せ、ちゅっと音を立てて吸い取った。 口づけもそのままに、熱く赤い頬へ、それ以上に熱い舌を這わせる。 発する熱も、涙も、全て舐め取らずにはいられない。 ――愛している ささやきあう言葉は、もうどちらの声なのかわからない。 やわらかな肌の弾きあう音、滲む体液の飛び散る音に交じって、悦びに喘ぐがまま、恍惚と紡がれる。 忘我の叫びを唇へ重ねたまま、二つの体がくずおれた。 夜明けまでの短い時を、緩いまどろみに寄り添い沈む。 ふと、陳琳は体を起こした。 「行くのか」 見上げる鋭い真紅の瞳へ、頷く。 「行く」 「そうか」 銀色の睫が、僅かに震えて瞼を下ろした。 黎明の微かな光と、未だ尽きぬ灯火の明かりと。 二つに照らされて柔らかに輝く銀髪を、一房すくい取り、名残惜しそうに口づけた。 「孔璋」 ふと、身を起こした公孫瓚が、じぃっとこちらを見つめる。 「また、来てくれぬか」 ああ、と呟き、陳琳はその体を思い切り抱きしめた。 「行って来る」 窓の外は鮮やかな東雲。 夜明けの光に月はいよいよ皓く、しかし、透き通っていった。 |