服の留め金を外すと、青白い肌と痩せた鎖骨が現われた。 「小娘のような体だな」 喉の奥で笑い、揶揄すれば。 「ふざけるな!」 羞恥と緊張が途切れたのか、顔を真っ赤にして怒鳴られた。 こちらはというと、唇をうっすらと舐めて、誘うような風情で怒りを煽る。 「ふざけて当然じゃ…これは戯れ…そうであろう?州牧どの・・・…」 「っ……!」 わざとらしく役職を呼び、嘲弄する態度に、怒りのあまり涙が出そうだった。 ――だが、ここで拒絶してしまえば、害を被るのは無辜の民。 唇を硬く引き結び、顔を背ける劉虞に、公孫瓚は嘲るように鼻を鳴らした。 相手を怒らせ、また詰まらせ、その顔色を観るのも一興。 媚びることのない凛とした振る舞いは、かえって似つかわしい。 可愛げのない美人には、快楽の味を強いてやるのが最も面白い。 抗う獲物を見下す公孫瓚は、どこまでも冷たく傲慢。 捕食者に逆らい見据える劉虞は、どこまでも清らかで静か過ぎた。 形のよい唇が白いうなじから喉を這い、肩から胸へと滑り落ちる。 「ふ…っ……」 半裸の体が震え、唇の動きに悶える。 胸元へ舌が伸びると、声を殺して体を仰け反らせ、舌先で弄ばれる快美に眉をひそめる。 「動くな…噛んでも知らんぞ……」 「な…っ……」 息を継ごうとするが、絶え間ない愛撫に声を漏らしてしまい、よりいっそう扇情的な喘ぎとなってしまう。 「誘ってくれる……」 いきなり、その唇を口づけでふさいでしまうと、舌を差し入れて、口中を犯すように弄った。 「ん……」 粘膜の触れ合う音を響かせながら呼吸する合間も、絡めあった舌は離さない。 唇を押し付けて、貪るように唾液を弾く。 激しい接吻を繰り返し、相手の唇へ唾液を絡ませて、舐め上げ、ようやく唇を離した。 まだ熱い呼吸を繰り返す唇を、軽く舌でなぞってやる。 片手で胸元を弄りながら、もう片方の手が下へ降ろされる。 「止め……っ……」 気付いて弱々しく動くものの、押さえようとした手は、与えられる快楽に震え、相手の肩へとすがりついてしまう。 「爪を立てても構わんぞ…悦いのだろう?」 そう囁いてやると、途端、左の肩に痛みが走る。 縋るというより、咎め立てるために爪が食い込んだ。 味わったことのない感覚に怯みながらも、精一杯、こちらを睨み上げる、その態度が逆に興をそそる。 唇を歪めるように微笑むと、動かす右手に幾分か力を込めた。 「…あ…ぅっ…」 きゅっと目を閉じ、震えながら縋り付く様子は、本当に愛すべき姿だった。 すでに緩い愛撫を受けて熱く、先端を指でまさぐれば潤み濡れている。 「ふ、くぅ…っ…ぅん…んっ…」 肉の薄いくびれをくすぐるように撫で、蜜口をこじ開けるように擦り上げれば、必死に噛み締める唇から長い呻き声が漏れた。 「声を出してしまえ…堪えれば、唇が切れる…」 「いや…っ…いや、だ…っ!」 快楽に耐える表情、その背徳的ともいえる美しさに、知らず知らず声が上ずる。 もっと見たい、もっと追い詰めて、絶頂を迎える表情が見たい。 欲望のまま激しく動く右手に、抱きかかえた体が跳ね上がる。 喉の奥にせき止められた悲鳴を逃すように、無理やり口付け、唇をこじ開けてやった。 「んんーっ!んぅ…っ!」 触れた唇は、先ほどとは比べ物にならないくらい、熱い。 切れ切れに続く悲鳴を抑えることもできぬまま、重なった唇の隙間から唾液がこぼれていく。 柔らかな肉と液の混じりあう音は、既に相手を貫いているかのように卑猥で、やけに大きく響いた。 「は…ぁ、あっ、やめ…っ…あぅ、あっ…!」 行き場をなくした手が、肩をしたたかに掴む。 しなやかな背中が硬直した。 掌で肉塊が膨れ、脈打つ。 すぐに、熱く濡れた感触が伝わる。 荒い呼吸を繰り返して余韻に溺れる肢体を見下ろした。 汗ばんで上気した顔が美しい。 目が合った相手は、快美に眉をひそめ、淫猥な視線の誘惑から逃れようと、目をそらす。 抜けるように白い太腿を抱える。 内股をやわらかく撫でながら、胸に付くほど脚を大きく曲げさせ、一気に開いた。 「やめ…っ……!」 顔を真っ赤に火照らせ、すばやく顔をそらすが、体は隠しようがない。 が、押し開いたまま、何もせずに見つめるだけだ。 視線だけが冷たく熱く肌の上を這い回る。 指と舌と唾液で、この上なく淫らに馴らされた肌。 それが、なぶるような視線を受けて、淡く紅く血が上っている。 「も…っ、いい加減にしろ…!」 もはや、恥も外聞もあったものではない。 紅潮した頬へ涙をこぼしながら、劉虞は公孫瓚を怒鳴りつけた。 「するなら…ッ…早くすればいい!こんな…こんな…!」 震える声を振り絞り、精一杯、怒りを表す様子は、はたから見ればとてもみっともなく、また可愛らしいものだった。 公孫瓚の唇に、嘲るような微笑が浮かんだ。 「早く、と言うなら、そうしてやらんでもないが…」 そう言って、不意に体を密着させる。 「な…、っ!?…ひっ…ああぁ…っ!」 劉虞の体が、悲鳴と共に跳ね上がった。 想像だにしていなかった痛みが突き刺さる。 「どうじゃ?このまま進めるか?」 性悪な囁きに言い返すことすらできず、劉虞は必死に首を振った。 すると、脂汗を滲ませた額へ軽く口付けが落ちた。 「下手をすると、気が狂う…拷問にも使えるくらいだからの…」 低く笑いながら、浅く挿した指先を引き抜く。 「うぁ、…っ…」 ひくりと震える、その感覚。 ――いっそ、このまま犯してしまおうか。 そんな嗜虐的な誘惑が、公孫瓚の脳裏をかすめる。 悲鳴を上げてのたうちまわる体を押さえつけ、腰を引き裂かんばかりに突き入れたとすれば、その感触はどんなものだろうか――。 いや、と首を振った。 類まれな体であるからこそ、下劣で卑猥な悦びに落としてやりたい。 苦痛ではなく、快楽に負けることほど、誇りを傷つけるものはない 「恥ずかしければ目を閉じておれ」 指を舐めながら、せせら笑った。 「これから、死ぬほど恥ずかしいことをすると思えばな」 劉虞の目に、うっすらと涙が浮かぶ。 それがたまらなく心地よかった。 |