帳中

□破鏡
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白い下肢をすくい上げて、散々に嬲った後孔へ、己の濡れたそれをあてがった。
もう、相手はなんの抵抗も示さない。
終わるまで耐えるのみと、諦めたようだ。
だが、薄く開かれた眼差しは、鋭く冷たく、凍てついた光を見せて、こちらを蔑んでいる。

いくらでも恨むがいい、と思った。

――恨んで、軽蔑したところで

――俺は動じないからよ…


勢いよく突き入れた。
「っう!…ひっ……いっ、ああっ!あああぁっ!」
痛みと圧迫に体が跳ね上がった。拒絶するように首を振り、痛々しい悲鳴が唇からほとばしる。
しなやかな白い体、その体内は異様な大きさと熱を止めようとして、きつく締め上げてくる。快感が全身を走り抜けた。
「っ……力を、抜け……っ」
だが、重い痛みに苛まれた耳に届こうはずもない。
しばらくそのままで、体を落ち着かせた。さもなければ、強烈な射精感に負けてしまいそうになる。
その間にも、食い込むような粘膜の動きが、絶え間なくゆるゆると刺激してくる。
「っゃ、やめ、…やめよ……あぁ…っ…」
切れ切れに叫び、潤んだ目で哀願する姿に、抑えかけた嗜虐の心が暗く燃え上がる。
「は…、やめて、いいのかよ…っ」
ぐっ、と腰を大きく進める。
「ぁん…!ん、っ、あ…」
弓形に反った背中へ銀髪がこぼれた。豊かな髪ごと背中から抱きしめ、耳元をねぶってやった。
「ひっ…!」
「いいんだろ…?止めていいか…?」
「ぅあ…ぁ…!…くそ、っ…!」
「そうさ、もっと鳴けよ…ほら…」
「ひ…!?っあああぁぁっ!」
いきなり突き上げられて、組み敷いた体が悲鳴を上げた。
「っあぁっ、あ、ぃや、やだ…う、動くな…ぁ…っ!」
必死に足を閉じようとする動きが、相手のものを食いちぎらんばかりに締め上げた。
腰をずらし、弱い場所へ、張った部分を擦り付けた。
苦痛とは違う絶叫。いや、嬌声が上がった。
「ぁ、も…っ!や、め……やめろ…!」
「あぁ…?そんなに善がって、いやらしく腰振ってる奴の言うことじゃねえよな…」
「…やめろ、いや、ぁっ…!おかしくなるから、もう…ッ!」
「なっちまえって、おかしく、さ……そしたら……」

そうすれば、あんたは俺のことを思ってくれるんだろうか。

「ふっ…あ……っん…あっ…あ、ぁ…」
「なあ…あんたの中、すげぇ気持ちいい…あったかくて、美味そうに食いついてくる……」
吹き込むように囁き、紅く染まった耳朶を食めば、悩ましい悲鳴と共に銀髪が踊る。
絶え間ない腰の動きはそのままに、震える喉から鎖骨、肩口、そして熟れきった乳首へ舌が這う。
「やっ…ゃだ…あ…ああぁっ」
硬く勃ち上がった雄もろとも腰を擦り付けられて、しなやかな背が仰け反った。
暴れる腰を抱え込むように抱けば、のたうつような動きが自身を痛いほど締め上げる。
「…ぁ、っ…かはっ……あ、あっ…」
喘ぎ続けた喉からは、かすれた悲鳴だけがこぼれ続ける。
うつろな目、紅潮した頬に幾筋もの涙の跡を見るのも愉しいが、それだけでは物足りない
「欲しいんだろ?…なあ…ん?」
じりじりと近づく射精の感覚に息を切らしながら、欲望のままに腰を叩きつけてやる。
腹のあたりもぬるりと生暖かい。限界が近いのだろう。
「言えよ、伯珪」
字を読んだのが、ずいぶんと遠く感じられた。
「欲しいって…言ってみな…」
「ぁ……げん、と…ッ…」
「ん?」
「ほし、ぃ…っ…か、ら……ぁ…は、やく…」
はやくきて――。
半ば唇だけの動きが解放を求める。

それが、心を灼き尽くすような強烈な快楽のもたらす、本能的な言葉であったとしても。
求められているのだと、思いたかった。

「きて……きて、くれ…ッ!」
「ああ…わかってるよ…」

握り締めて白くなった指へ、手を添えてやった。
もう悲鳴しか上げなくなった唇が、達した瞬間、何を呟いたのか。
知りたいとは思わなかったし、知りたくなかった。


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