捧物

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貴方の枕、私の枕。




「さあ、スー!一緒に寝ようではないか!!」
「お断りさせていただきます」

自分の枕抱えて私の部屋まで突撃してした父の方を見ることなく言った。

「スーよ、私は悲しい!」
「…誰ですか」

はあ、とため息をつく。
とたん、ばったん!と扉が開き、父はそれに巻き込まれて壁に叩きつけられた。唖然。そして父をそんなにした張本人──異母兄は優雅に部屋に入ってきた。もちろん、自分の枕を抱えて。

「スー、義兄さんと一緒に寝ようか」
「…!帰ってください!」

危ない。笑顔にのまれるところだった。一瞬頷きかけた首を慌てて横に振る。異母兄は好きだがさすがにこの年で一緒に寝るのはまずかろう。

「そうか…それは残念」

じゃあおやすみ、と異母兄は私の額に口づけをおとし去っていった。…なんというか、恥ずかしいぞ、すごく。私が真っ赤になった顔と格闘していると、またしても、ばったん!と扉を開けて、今度はレオンが飛び込んできた。枕は無しだ。

「叔父上!叔父上の隣で眠らせてください!枕ははんぶんこで!!」
「断る!」
「ぐがふっ!!」

いつも思うが馬鹿かこいつは。飛び付いてきたところを顔面に蹴りを入れて部屋から追い出した。ふう、と一息ついたところで今度は静かに扉が開く。そこにいるのはポリュデウケス。その手にはやはり枕。

「ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「頼むからやめてくれ」

そりゃあ子供の頃は怖いだのなんだの言って異母兄が外征に行っている間はポリュデウケスと寝ていたがやはりこの年になってまでというのは。だめだろう、うん。

「そうですか。では」

おやすみなさいませ、と一礼してポリュデウケスは帰っていった。あふ、とあくびをして寝台によじ登る。
三度目の、ばったん!
扉が開いて飛び込んできたのはオリオン。

「スコピー!一緒に寝よー!」
「兵舎に帰れ!」
「がふっ!?」

これは枕元に置いていた読み終わった本で撃退。
ふっ、と蝋燭を吹き消して、やっと掛布にくるまった。

誰か私に騒がしくない夜をくれ。




END.
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