捧物

□6666hitリク。
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気付いてよお願いだから。




はあ、とため息。麗らかな昼下がり。鍛練場で槍を振るう異母兄をじっと目で追う。憂鬱は恋の色。翻る赤は私を引き付けてやまない。しかし近づけない。なんて不条理。いや…

「…私の意気地無し…」

自分で言って落ち込んでいるようでは世話はない。はあ、ともう一度盛大にため息をついて自分も鍛練場にでる。
せめて隣に居たい…!と思ったのもつかの間、異母兄は槍を片付けている。
自分のタイミングの悪さに絶望。自分も片付けよう、と何もしていないのに鍛練場をでる。なんなんだ自分の行動の意味不明っぷりは。ちょっと涙目。
はあぁ、とまたため息をついて視線を上げた。ぴし、と背筋を伸ばして歩く異母兄の背中。揺れる赤毛。しばし見とれていると、視界の隅で、ぐらりと槍が倒れた。異母兄のほうに。とっさに飛び出す。

「っ危ない!」
「!?」

ごす、と倒れてきた槍が背中にあたる。痛い。異母兄のほうを見ると無傷だ。直前でひらりと交わしたのだろう。…私、格好悪い…

「…お怪我は、」
「見て分からんか。無い」
「ですよね…」
「馬鹿か貴様」

ずーん、と落ち込む。どうせ、どうせ私は馬鹿ですよ…!
がっくりと肩を落とす私の耳に、くすりと笑い声が聞こえた。はっとして顔をあげる。

「っ!」
「だが、その心意気は誉めてやる」

ああああもう義兄上その笑顔は反則です!!
(今なら死んでもいい!!)




END.
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