ネタまとめと拍手小話。

□2009年9,10月のネタ。
2ページ/17ページ



知らないのは私ばかり。



綺麗な赤色の瞳が瞬く。
ああ、睫毛まで綺麗な赤色だ。
至近距離でまじまじと見つめた。大粒の涙がぽろぽろと白い頬を伝っていた。

「おまえは、また、わたしのたいせつなもの、をもっていって、しまうのか」

舌足らずな声が、しゃくりあげながら言う。覗き込んだ瞳の底には深い悲しみと、どうしようもない諦めだけが見えた。
何故、どうして、私がそんなことを言われなければならないのか。
私は知らないのに、彼はまだ泣いている。止まらない涙にくちづけた。
ばちんと頬が鳴る。ぎりぎりと音がしそうなほど私を睨み付ける赤色は、もう泣いていなかった。

残ったのはただ私の濡れた唇だけ。






,
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ