ネタまとめと拍手小話。
□2009年9,10月のネタ。
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知らないのは私ばかり。
綺麗な赤色の瞳が瞬く。
ああ、睫毛まで綺麗な赤色だ。
至近距離でまじまじと見つめた。大粒の涙がぽろぽろと白い頬を伝っていた。
「おまえは、また、わたしのたいせつなもの、をもっていって、しまうのか」
舌足らずな声が、しゃくりあげながら言う。覗き込んだ瞳の底には深い悲しみと、どうしようもない諦めだけが見えた。
何故、どうして、私がそんなことを言われなければならないのか。
私は知らないのに、彼はまだ泣いている。止まらない涙にくちづけた。
ばちんと頬が鳴る。ぎりぎりと音がしそうなほど私を睨み付ける赤色は、もう泣いていなかった。
残ったのはただ私の濡れた唇だけ。
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