長編2(成代)

□成り代わり幸村サイド
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え〜、皆様こんにちは。
何の因果かバサラの真田幸村に成り代わってしまった悲劇のヒロインです。

先日佐助をゲットしてから数日。
可愛い可愛い佐助との穏やかな時間はとても有意義なもので、ささくれ立った精神が癒されるのを感じていた。
この前、井戸の近くで女中達が「最近、弁丸様の雰囲気が柔らかくなられた。」と噂するぐらいに私の機嫌は良かった。

……かった、のに。
あぁ、本当に…久々に切れそうです。

ってか、切れ さ せ ろ !!



『……これは、どういう事だ?』

あぁ〜、何五歳の餓鬼相手にビクッとしてやがるんだ、この野郎。
確かに、目の前の出来事に子供らしからぬ低くドスの効いた声が出たのは認めるが。

「べ、弁丸様なぜ此処にi『どういう事だと聞いている。』…っ。」

こちとら転生してからは気が長くないんだ。
無様に言い訳考えてる暇があるなら、この状況を説明しやがれ。

何故、私の(強調)佐助が皮下脂肪たっぷりの豚にも劣るブ男に押し倒されている?
そんなに私の堪忍袋の尾を切りたいのかぁ?あははっ!(目が笑って無い)


「べ、弁丸様…。」

『佐助、来い。』

こちらを縋るように見る佐助の言葉を遮り手招きする。
直ぐに男の下から消えて私の前で頭(こうべ)を垂れる佐助の頭に手を置く。
微かに震えたのを感じながらもしちらは見ず、唇に緩く弧を描かせて瞳に冷え冷えとした暗い光を宿らせて男達を見据えている。

全く、最近は武将になるために勉学だけでなく鍛練もしようと母屋に来た途端に、コレだ。
一人で筋肉トレーニングをするのではなく、兵法も含めて学ぶならば父(佐助の事で少し見直した)に頼んで師を付けてもらおうと思ったのが間違いだったのか、父と会っている僅かな間に佐助を手籠めにしようとするコイツらが愚かなのか…確実に後者だな。

用が終わったらさっさと退室して離れに戻ろうと思い、佐助を呼んだ。
何時もならば直ぐ様右斜めに降り立ち、あのイケメンで可愛らしい顔をにっこりと綻ばせるのに、今日は返事すら無い事に違和感を覚えて近くに居た忍(天井裏に忍んでいたヤツ)に聞く。

非常に腹立たしいが、佐助は私の護衛だけでなく真田の忍としての仕事もさせられている。
給金を払っているのが父なのだから仕方が無いが、やっぱり腹立たしい。

佐助を酷使する忍頭は死ねば良い。(酷笑)

で、その関係で直ぐに来られなかったのかと問えば是と返ってきた。
きた…のだが、どうにも嘘臭い。
陰口を言われ慣れたせいか、腹に一物ある大人とばかり話していたせいか、そういう嘘に敏くなったようなのだ。
上辺の言葉だけで送りますか?と問う忍を放って走り出す。

走って、擦れ違う女中や兵達に奇異の目を向けられながらも走って探せば、人気の無い屋敷の一角に複数の気配に紛れて感じる佐助の、消え入りそうな気配。

全速力で走りぬけ、スパーァアンッ!!と襖を壊す勢いで開けた。
実際、連なった襖3枚が吹っ飛び、2枚が破れていた。

流石幸村、馬鹿力の片鱗有りってか?中身女だけど。

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