長編2(成代)

□成り代わり佐助サイド
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貴方の気遣いが、嬉しくて、嬉しくて…辛かった

何も返せない不甲斐無さに、悔しくて…悲しくて、涙した





『……これは、どういう事だ?』


本当に、驚いた。

今日は弁丸様が所用があるとかで母屋に来ていたんだけど、俺様は忍だから弁丸様が部屋から出てくるのを待っていたんだ。

そうしたら、家柄だけが取り柄のようなブヨブヨ横に太って真ともに戦働きの出来なさそうな男共が寄ってきて難癖をつけてきた。

よくある事だ。
逆らえぬ忍にネチネチと嫌味を吐くのは、大抵が忍は下賤だの俺様の髪色がどうたら、だ。
普段ならば頭下げたまま適当に聞き流しているのだが、今回ばかりはそうもいかなかった。

「全く、流石は弁丸様だ。こんな奇異の者を傍に置くなど、俺には出来ん。異端同士、馬でも合ったのか?」

あろうことか、その男共は弁丸様まで馬鹿にしたのだ。
瞬間的に感情が制御できず、しまったと思った時には相手をギッと睨みつけていた。

その後は、想像出来ると思うが無礼だ躾け直すだの喚いた男共に人気の無い部屋へと押し込まれた。
逃げようかとも思ったが、そうすれば弁丸様の立場が悪くなると気色悪く笑う男共を殴り飛ばしそうなのをグっと堪えた。

別にこういう事は初めてじゃない。
里でも異端だった俺様は、嫌がらせ混じりの修行で房術も習った。
あの時と同じだ、と思えばいい。

畳に押しつけられ、忍び装束に薄汚い手が伸びてくる。
弁丸様の立場を守れるならば、どうって事はない。

早く終われ、ただそれだけを願って目を閉じた。


 なのに……



「べ、弁丸様なぜ此処にi『どういう事だと聞いている。』…っ。」



 なのに何故、貴方はそこに居るのですか?
 貴方にだけは、こんな自分を見られたくないと思っていたのに。


呆然と男の下から居る筈の無い主を見上げる。

「べ、弁丸様…。」

『佐助、来い。』

呼ぶ声は酷く冷たく、五歳児の声には聞こえなかった。
反射的に体は弁丸様の命に従い男の下から抜け出て目の前に頭を垂れる。
その時にチラリと見えた襖は敵襲でもあったのかという程にグチャグチャに破壊されていた。

 どんだけの力で開けたの!?
 あり得ないぐらいグチャグチャなんだけど!
 破れるとかって次元じゃないよ!?

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