長編2(成代)

□成り代わり幸村サイド
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まぁ、ただ北jy・・・メンドクサイな。じい様で良いか。老人だし。←
で、そのじい様自体はたまに小太郎に菓子をくれたり肩叩きを頼んだりと完全孫扱いだったらしく、嫌な思い出は無いらしい。
しかも、ゲームやアニメのじい様と違い、ご先祖様や過去の栄光に縋るような事はしていないらしい。
一応、現在でも城主をやってはいるが政(まつりごと)にも口を出さずに息子や孫に任せて楽隠居状態らしい。
さっきかららしいらしいばかりだけど、全部小太郎から聞いた話や佐助達の情報だから仕方ない。

え、楽隠居なのに何で城主やってるかって?(←ドコに話してる)
何でも今の政を取り仕切っている息子と孫の出来が大層悪いらしく、じい様の代から仕えている老臣達の受けが悪いらしい。
息子達は息子達で何時もじい様と比べてくる老臣達が疎ましい、と。
それで、その緩衝材としてじい様が今でも城主として双方の仲違いを止めているらしい。

大変だな、じい様。
じい様は性格は違うようだが、ゲームでの年齢とは同じらしくかなりの高齢だ。
なのに今回の戦では使えない息子達の代わりに総大将を務めている。
ご苦労な事だ。
しかも、本来ならば北条と武田は同盟を結んでいた仲。
それを破棄したのは織田に怯えた息子と家臣のせいらしい。
本人望んで無いのに戦とか、マジで同情だ。

てか、正直やりづらい。
これがアニメ版のご先祖様命の武田信玄にやられちゃったじい様なら、私は何の躊躇も無く城下を駆け、小田原の誇る巨大門を突破し、奥にいるじい様を屠ったのだろうが・・・話を聞くだけでほのぼのしてくるじい様を殺すのは若干気が引ける。

若干だけだが。(オイッ)

まぁ、何時までこうしていても仕方が無い。
眼前には北条の軍が陣取り、こちらを睨みつけている。少し遠くでは別の部隊が既に交戦中だ。
私の後ろには戦の経験の少ない・・・ぶっちゃけると悪意以外の何物でもない新平卒の集まりの特攻部隊が敵の気迫と雰囲気に呑まれて逃げ腰になっている。

何でも鬼と称された私に相応しい初陣となるように、真っ直ぐに敵陣を突っ切り巨大門を閉められる前に破壊、若しくは中に滑り込んで内外での挟み撃ちをするための特攻部隊の将を任せられた。
本来ならば篭城される前に城を落とすために重要となる立ち居地の筈の特攻部隊を、一番死亡率と五体満足率の低い部隊を新平卒とか出来の悪い兵の寄せ集めにされた。

舐めてんのか、コラ。(真顔で黒オーラ放出中)

マジで死んでこいってか?
その後、門も閉じられ特攻部隊を廃して士気の上がった軍を相手にするつもりだとしたら、とんでもない馬鹿どもだ。
分かってたけど。←

佐助も小太郎も、十勇士でさえこの人事に怒り心頭だ。
忍に感情が無いって嘘だね。超怒ってたし。
この案出した豚どもの暗殺計画立てるぐらいに。

「旦那、やっぱり俺様達が先に行って北条の首取ってこようか?」

と、まぁ過ぎた事を思い出すのはこれくらいにして。
動かない私を心配して、傍らに膝を付く佐助を安心させるためにも・・・・・・

『いや、それでは駄目だ。そんな方法でこの戦に勝っても、自分達だけ安全地帯に引き篭もった豚共は納得しないだろう。何よりも、佐助達だけを危険な目に合わせたくは無い。』

「それが忍の勤めだよ、旦那。(“だけ”がやたらと強調されてたような…汗)」

『そうであっても、某は某の愛しい忍と共にありたいのだ。そして、それを邪魔する輩を某は許さない。』


・・・この戦、勝たしてもらおうか。


後ろを振り返り、怯えに引き攣った顔をする兵達の顔を一人一人見るように視線を向ける。

『皆聞け!!此処に居る者達は、察しているのだろう。真田の異端児を押し付けられた、己らが哀れな捨て駒であるという事を。』

傍らから「旦那、何を!?」と佐助の慌てた声がするが、今は無視だ。
捨て駒という台詞に憤るもの少数。やっぱりか、という顔をするものが大半。
まぁ、一応現状を理解しているのであれば、まずまずだ。そんな事も理解出来ない馬鹿はいらん。
気まずい沈黙を破るように、大きな声で朗々と告げる。

『だが、それは間違いだ。』

皆が何が?という表情でこちらを見る。

『人よりも早く言葉を解し、人よりも早く自我を持ち、人より異端であるがゆえに・・・某は、“鬼”なのだそうだ。』

薄っすらと浮かべた笑みに、兵達は忌諱の眼を向ける。

『人が恐れ、怖れ、畏れる“鬼”。異端の力を持ち、知を持つからこそ呼ばれた名。鍛錬で、某に勝てた者が居たか?真田の軍師の戦略を説き返したのを見たな?』

一人、二人と私が真田の家臣どもに喧嘩を売られて鍛錬と称した試合を見て居た者、先程の軍師の穴だらけの戦略に口を出したのを見て居た者達が「確かに」、「あれは凄かった」と口にし始める。
私は変化し出した兵の雰囲気に、内心ほくそ笑む。
表面ではそんな素振りは見せず、芝居掛かった動きで槍を持った腕を掲げる。

『されば、“鬼”の某が人の群れ如きに負けようか!いや、負けはしない!!』

暗く怯えが滲んでいた瞳に、光が宿る。
それは、希望・・・・・・狂気という名の希望の光だ

『某の、“鬼”の後を着いて来い!!それが、勝利への道だ!!!』

バッと側にいる馬に跨ると、高い馬の嘶きと共に丘を下る。
真っ直ぐに、鬼気とも取れる覇を撒き散らしながら。

『真田源次郎幸村、いざ参る!!!!』

 オォオオオオオォッッツーーーーーー!!!!!!

  
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