Sサイズな私

□第3話
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「必ず一年で治してあげるからねェ」



…何が「必ず一年で治す」だ、この大ほら吹き元科学者現犯罪者。
こないだ、キャプテンからマスターの正体を聞いた。
四年ほど前に、ここパンクハザードでの毒ガス事故を引き起こした張本人:シーザー・クラウン。
こんな実験(こと)をしている時点でマトモなヤツじゃないとは思っていたけど、やっぱりそうだった。

私がパンクハザードへ上陸して、このビスケットルームで過ごすようになってから、三か月が経とうとしている。
私と一緒に連れてこられた子たちは、徐々に体が大きくなっていった。
夫婦の子どもさんも、以前に増して体が大きくなった。
私は生ものしか食べないようにしているため、原因は特定できないが、
私たちが摂取しているものの中に何かが仕込まれていると考えていい。

健康体そのものの子供たちにはそもそも治す病気なんてない。
むしろ、体調には変化はないものの、子どもたちの体はどんどん大きくなって、こちらに来てからの方がおかしくなってきている。
もちろん、こんな状態の子どもたちが家に帰されるわけもないし、
そもそも子どもたちを帰す気などハナからないだろう。
子どもの数は治療が終わって減るどころか、どんどん増えるばかりだ。



「今日からまた新しいお友達が加わるわよ。みんな、仲良くしてあげてね。
何かあったら私に言って」

「「「はーい、モネさん!」」」



ああ、また新しい子達が連れてこられた。
来たばかりの子達は、緊張した様子で室内を見回したり、足元をじっと見て立ちすくんでいる。
ここへ来てから、何度も見た光景だ。

今回もいつもと同じように、ここでの生活が長い子どもたちが、
新しく来た子どもたちに、話しかけたり、遊びに誘ったりしている。
こんな場所じゃなくて、こんな状況じゃなかったら、すごくほほえましい光景なんだろうに。

緊張気味だった新しく来た子どもたちも、あたたかく迎え入れられて、幾分か表情が和らいできた。
親と離れ離れになっている子達だ。笑って過ごせるならば、せめてもの救いになるかもしれない。

その中で、一人だけ、ずっと硬い表情をしたままの子がいた。
不思議な髪型をしているその子は、終始警戒を怠っていない様子だ。
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