Sサイズな私
□第4話
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この日も、私はキャプテンと接触した。
皮肉にも、子どもが増えたことによって、一人ひとりへの注意が散漫になり、私の行動範囲が広がったのだ。
その一方で、増えた子どものぶん、多数の見聞が集まり、
今子どもたちの間では、この島には建物もなく、誰もいないのだという話が出始めている。
恐らくこれは正解だろう。一時期は毒ガスが充満していた島だ。
天候も極端だし、とても人の住める環境ではない。…この施設を除いては。
おもちゃやお菓子が豊富に取り揃えられたビスケットルームで楽しそうに遊んでいても、
時折沈んだ表情を浮かべる子がだいぶ増えてきた。
子どもたちはもう精神的に限界を迎えようとしている。
(それにもしかしたら、限界を迎えようとしているのは、精神だけではないかもしれない…)
『キャプテン、そちらはどうですか?』
「SADのある部屋への侵入ルートは攻略した。お前のほうはどうだ」
『捕縛用の海楼石の鎖をいくつか、ただの鎖と入れ替えることに成功しました』
「そうか。なら……近々動く」
『了解、キャプテン』
できれば、この機会にあの子達も助けてやりたい。
最近になって、私の勘が告げているのだ。“時期が近い”と。
『あ、そういえばキャプテン、気になる男の子がいるんだけど』
「………………あ?」
ドスの効いた低い声が、少しの間を置いて返される。
キャプテンの、眉間のしわがいつにも増して深く、目つきが悪くなっている。
知らぬ間に、何か気に障るようなことを言ってしまったのだろうか…。
しかしまるで心当たりがないので、とりあえず話を進めてみる。
『えっと…、今日ビスケットルームに来た子なんだけど、
すごく警戒心が強くて、ただの子どもじゃないって感じがして』
「(そういう意味でか)
…チッ、まぎらわしい言い方してんじゃねェよ」
『(えっ、私何かまぎらわしいこと言ったっけ?まあ、キャプテンのも独り言みたいだし、ここは軽くスルーして…)
それで、その子について、少し調べてみようと思うんです』
さっき思い出して、気づいたのだ。
先ほどの男の子の外見は、お世話になった夫婦の家で読んだ本に載っていた、サムライの装いと一致するということに。
『たぶん、ワノ国の…サムライの子ども』
「サムライ?」
『“かたじけのうございます”のアレですよ』
「またお前は妙なことを…まあいい、近々動くことは忘れるな」
『アイアイ』
しばらく会っていない癒しの白熊クルー:ベポの真似をして、敬礼すると、
あきれた表情のキャプテンを残し、私は検査室へ向かった。
今日は、秘密の部屋について調べようと思っている。
シーザーは賢いのか間抜けなのか、子どもたちへ、注意事項の一つとして、「秘密の部屋には絶対入るな」と言い渡している。
こんなの言われたら、絶対何かあると思うにきまっているでしょう。