御題物

□03,毀れ落ちるはひたすらの想い。
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僕は、矢口雅哲。年齢で言うと高校生くらい、多分。知能で言うともっと理解んない。
僕は小さいときから他人とは少し違っていて、いわゆる「異端」で、それでいて、かつ「天才」と呼ばれる存在らしかった。

押し並べて僕は他人に興味が無く、
自分にすら関心は無く、

皆が「理解できない」っていう視界を持って、暇潰しがてらに沢山のコンピュータネットワークを扱ってきた。
僕にとっての暇つぶしは
政府にとっての唯一らしく、
寝ているだけでもお金が入ってきた。

僕の前で法律は無になる。

そう言われた。その代わりに沢山の裏を嗅ぎ回されて、利用されて、
言うなれば僕は生きるパーソナルコンピュータとして使われているようで。

まぁ、別に、産まれた時から(この場合”物心付いたときから”とは適切ではない。僕は肺で呼吸を始めた瞬間から記憶がハッキリとしている)僕は一人で
母も、父も、その関係も他人だったし(いわゆる掛け合わせで産まれた試験管ベイビーってやつ)、
おかげで僕が見た母親の姿は、培養器としてだけで雇われたその、汚らしい性器のみだ。それでもって多分、この先も見る事はない。

そのせいか、これが、幼少時代の親子関係の重大さを立証するものなのか、僕には理解らないけれど
この絶対的な脳味噌と、冷静沈着な神経と、適切な判断、その代償として
いつまで経っても成長しない精神年齢と、それに伴う癇癪、対人嫌い、情緒不安定。
僕はいつまで経ってもどうやら子供みたい。未だに一人じゃ何も出来ない。服も着替えたくない。着替えられないんじゃないけれど。

でも、別に困る事は無い。
だって僕は、そんな事に関心が無く、興味も無く、相対的に見て生活に困らなければそれで良いんだ。


それに、僕が産まれてからこの方、僕の両手みたいに、両足みたいに一緒に居てくれる
そんな存在が居るから。
傍に居る理由なんてどうでも良い、関係ない。
僕にとっては、彼が唯一無二。
この身体が死を迎える寸前まで、多分、僕は彼しか信じない。
僕は彼を信じている。
それがゆっけ。

「ほら、ミヤくん。顔洗ってから外出てってゆってるでしょお!?」

学者だから頭も良い。
僕の前や、僕の周りに居るから、それは酷く薄れてしまっているけれど。


僕は知ってる。
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