まほらば

□あべこべ
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楽屋に響く、ため息ひとつ。
横に座るは金色の茸。・・・いや、俺。

















「たろさんって、かわいいよなぁ」






ポツリと呟くのはたつぅ。

さっきから、同じ言葉を何度聞いたんだろうか。





「竜太朗さんのこと?」


「うん。控え室一緒かなあとか、今日ちっと期待したんだけど、流石にそりゃねえよなあ。ああ。ガッガリ」




…ある訳ねえだろ。何言ってんだこの禿げ損ない。禿げろ。禿げて反省しろ。





「でも共演するじゃんか」


おもしくも無い会話のキャッチボールは苛々する。





「そうなんよー!ああ。・・・決めた!!!」

「何を」



そんな事より急に立ち上がって大きい声出さないで貰えるかなもう君29歳でしょ?



でも、こんなの未だ全然可愛い方に過ぎなかったんだよね。



次に聞く言葉に俺は、一体いつ育て方を間違ってしまったのかと

たつぅと過ごした十数年を悔いる程に嘆き、そして何かへの後悔をした。




















「俺今日たろさんにちゅーする!!!」



















「・・・・・・・」






何それ。




そう言っても、たつぅは相変わらず清々しい笑顔を浮かべていた。


あ。しまった。声に出てなかった。



今度は声に出して言った。




「何それ」





「だから!今しかチャンスねえから!客の前ならどう考えてもパフォーマンスじゃん!?ファンも喜ぶ俺も喜ぶたろさんは何もおもわねえ!やっべえ名案じゃね!俺やばくねえ!?」



・・・煩い。

馬鹿な子なのは昔からだったけど、いい子に育ったと思ってたのに・・・。
お母さんは悲しいよ。
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