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□心の余白部分
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絵の具を垂らしたような真っ青な空を、白い雲が風にそっと背中を押されるようにゆっくりを通りすぎていく。
アルトはその様を教室の窓枠を絵画のフレームに見立てながら、移りゆく空を景色をぼんやりと眺めていた。

そこに広がる景色はフロンティアでは珍しくもなんとも無い、いつもと変わらぬ空だった。



アルトは小さくため息をついた後、視線を空から隣の空席へとすべらせた。
いつもならここにはシェリル・ノームが座っている。
そして、アルトのノートや教科書の余白部分に他愛もないメッセージや落書きを施し、いたずらに笑うのだ。
たまに真剣に授業を受けている様子を見せたかと思うと、こくりと頭を擡げてみたりするのだった。
とにかく、シェリル・ノームはこちらに呆ける暇を与えることのない存在なのだった。


開かれた教科書のページはまっさらのままだった。
その前もそのまた前のページも・・・。

びっしりと並べられた数式や文章よりもアルトの目にはその隅にある余白に向けられた。

再び空へと視線を動かした時だった。


「わあっっ!!」

予想と反した景色が視界に広がり、アルトは思わず素っ頓狂な声を上げた。









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