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□はじまりの春
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はじまりの春




風になびくのは暖かく
柔らかな春の香り。

はじまりの匂いは優しいけれど
ここがテレビも冷蔵庫もない
小さな田舎の島なんだと
思いしらされて
ため息が漏れてしまう。

石ころと枝だらけの荒れた畑。
到底一人では持ち上げる
ことのできなさそうな
大岩まで転がっている。

まだなんにも牧場らしくない
広い庭の端から端まで
歩いただけで
今日はもう疲れてしまった。

大自然は人々に恵みを
もたらすけれど
時に厳しく残酷なのだ。

今にも壊れてしまいそうな
古びた木製のドアに手をかけて
最低限生活できるだろう
部屋の家具と間取りを眺め
ベッドへ深くダイビングした。
当たり前のように都会を
享受してきた私は
綺麗な空気に頭痛を
もよおしていた。


タロウさんは世話好きで
とてもいい人。

まだ島の人達には
面会していないけれど
みんな…きっと。

でも不安だった。すごく。
経験したことのないことばかりで。

わからないことは
島の人達にきけばいい。

何を悩んでいるんだろう、私は。

静かに頬に伝った涙を
拭って深呼吸してみた。

やっぱり空気が澄んでる。

微かな期待と大きな不安が
入り混じる。

きっとすぐに私は
この島を好きになるだろう。

日々この綺麗な太陽の光の
指す島で新しいことを
発見してたくさんの思い出を
つくって…

そうだ、不安なのは
この何もない牧場で
一人ぼっちなことだった。

きっとそれは今だけだから…

早く好きになりたい。
早く仲良くなりたい。

この"ひまわり諸島"の
仲間達と。


そうすればきっと、頑張れる。






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