Believe the fairy.

□はなしてなんて、あげない
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はなしてなんて、あげない



エドガーは屋敷の窓から、庭にいる愛しい婚約者を眺めていた。
きっと妖精達と戯れているのだろう。
淡い光がキャラメル色の髪や、華奢な肩の上に見えた。
それを見ると、妖精達を引き離したいという衝動にかられる。

「…ああ、こんなことじゃ駄目だ」

エドガーは妖精に嫉妬してもどうしようもないと、自分にあきれ返った。
もう少しでリディアと結婚するのに、独占欲の強い、嫉妬深い男だと思われたらどうする。
彼はもう思われてるということには、気づかないふりをした。

「もう少しでリディアと結婚する、か」

その言葉をもう一度繰り返す。
ここに来るまで色々なことがあった。
それなのに、平和な日々を手に入れようとしている。
彼女と結婚できるなんて、幸せすぎて怖いくらいだ。
まだ色々問題もあるけど、きっと二人で乗り越えていけると信じてる。

「でもこの僕が、幸せすぎて怖いなんて」

彼はじちょう気味につぶやく。
幸福だからこそ、一瞬で全てが壊れてしまったら。
そう言えば、これは僕の見ている妄想かもしれないと思ったこともあった。
本当にリディアという女の子はいるのだろうかと。
目が覚めたら、まだアメリカにいるかもしれないと。
レイヴンからはっきりと答えられても、やっぱり不安で。
その時、コンコンとノックの音がした。

「エドガー、いる?」

後に聞きなれたかわいい声が続く。
ドアを開けると、そこにいたのはリディアだった。
庭から走ってきたのだろう。
頬が淡く染まってとてもかわいい。

「エドガー、あの…」

彼女が何か言いかける前に、エドガーは動いていた。
ふわりとリディアを抱き締める。

彼女は、確かにここにいる。

優しく香るカモミール。
手に触れるのは、甘いキャラメル。
暖かく、やわらかい感触の華奢な体。
そして僕を映している金緑の瞳。

もうすぐ自分だけのものになる、大切な宝物。

一生、はなしてなんて、あげないよ。

僕の妖精。




 
 

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