DEATH NOTE

□メロのきもち
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息が止まるかと思った。

あの人がいるわけない。
あの人は死んだと、聞いた。

でも
その後姿。

独特の座り方。
飴の持ち方。
極端な猫背。
あの人以外にこんな後姿の人間がいるか?

声をかけたい。
でも怖い。

振り返ったその顔が、あの人であるわけはない。
でももし、声をかけずにやり過ごせば、
もしかしてあの人は生きているのかもしれないと
そう思いながら生きていける気がする。
希望が持てる気がする。

あの人がいれば。
あの人がいるだけで。


あの人がいなくなって
俺の世界は変わってしまったのだから。


俺はこんなに臆病だったか?
そう笑いとばそうと思っても
あの人を
その最期を思うだけで
俺の心臓が縮んで凍り付いてしまいそうになるんだ。

声をかけることはできない。
立ち去ることもできない。


俺の気配に、相手が気付いて、ゆっくりと動いた。

振り返ってしまう。

やめてくれ

俺の心臓が





動けない。

目を背けることもできない。

そして振り返ったその顔は





俺を瞳に映して
ゆっくりと笑顔になった
その顔を見て



驚愕で、夢を見ているんじゃないかと思う。
でも心のどこかで
「やっぱり」
って思っていた。


信じてたから。


約束を果たさずに死ぬわけないって
俺たちを残して逝ってしまうわけないって

信じてた。





そしてその人は
俺が一番欲しかった言葉を言ってくれた。
俺に
一番に


「ただいま、メロ」


俺は飛びついたりしないぞ。
俺は大人になったんだから。
もう15になったんだ。
あんたがいない間に。


それなのに
子供みたいに

涙が溢れて止まらないんだよ。


その人は立ち上がって俺に歩み寄って
手を伸ばして
阿呆みたいに棒立ちでただただ目を離せずにいる俺を
優しく
でも強く
抱きしめてくれた。
いつものように。

細いのに、大きな体。
懐かしい甘い匂い。


話したいことがいっぱいあるんだよ。

ロジャーからあんたの話を聞かされた時のこと。
ニアのこと。
俺がハウスを出たこと。

でも、何も言葉にならない。
代わりに、蛇口が壊れた水道みたいに止まらない涙と一緒に出た言葉は。
「馬鹿野郎…」



俺の髪を、細い指が撫でた。
溜め息混じりに、さっきよりずっと近いところで、声が聞こえた。
「心配をかけて、すみませんでした」





心配かけたっていいよ。
謝んなくっていいよ。
いつものことだろ?



俺は

Lが生きていてくれれば
それでいいんだよ



―end.

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