Dream
□世界が笑うとき
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世界が泣いたとき。
それは雨となって地上に降り注いでいるのだと思う。
では、世界が笑うとき。
あたし達が生きるこの地球は、どうなるのだろう。
「ばかじゃねーの」
「あ、ばかっていった」
「ばかじゃねーの」
「うわわ二回言った!!」
質素な部屋に響き渡る、甲高い声と低い声。外から聞こえるのは、一定のリズムを刻む音。
今日は雨だ。
嵐にならなかったからいいものの、なんだか気分が乗らないというわけで船を適当な無人島にとめている所だった。
このトラファルガー・ロー率いるハートの海賊団は、テンションとやらが命なのだそうだ。
キャプテンは、こんなにも死神みたいな顔をしているというのに。
「ひどい…」
「うっせ」
「だって暇なんですよ」
「へぇ」
「知らないんですか?暇というのは馬鹿にしちゃいけないんですよ、悪魔ですよ悪魔」
「…………」
無視。
さすがのキャプテンも雨で参っているのだろうか。そう思い込んで溜息をこぼせば、じろりと睨み付けられた気がした。
睨みたいのはこちらだというのに、まったく。
「…はぁ、」
キャプテンが相手にしてくれないので部屋を出て行こうとすれば、途端にひかれる腕。
あまりにも突然の出来事だったので驚いてそのまま重力に身を任せれば、ぼす、という音とともにキャプテンの腕の中へと直行していた。
わけがわからない。
「きゃ、キャプテン?」
「勝手に出て行くな」
「は?!だだだってキャプテンが相手にしてくれないから!」
「…疲れてんだよ」
「…だ、だからって……」
疲れてるってだけで好きでもない女の人を抱くんですか?
思わず口をついて出そうになった言葉を慌てて飲み込んで、なぜか早鐘のようになる心臓を押さえ込む。
そういえばキャプテンは、今まで船をとめてきた島全部に女性が一人ずついるんだっけ。
なんて女たらしなんだ…
心中で思って、思わず溜息をこぼした。
「んだよ」
「べつに…」
「お前何怒ってんの?」
「怒ってなんかいません」
ばかばかしい。
思って、暫くキャプテンの腕の中に収まっていたら、トクン、と何か近くで聞こえた気がした。
不審に思って発生源に耳を当てようとしたら、急に抱いていた力を緩めてあたしの両肩をつかんで引き剥がすキャプテン。
「ちょっ、…!!!」
「――――っ」
益々わけがわからなくて今度こそ文句を言ってやろうと顔を睨みつけてやったら、そこには右手で口元に手を当てている彼の姿があって。
「キャプテン…?」
「……もー部屋帰れ」
「はぁ?!何で急に…」
「俺が知るか!!」
「逆切れ?!って、わっ」
ドンッと突き飛ばされて、ベッドの上から床へと強制ダイブをさせられる。
腰を抑えてキャプテンを見上げれば、顔をトマトのように真っ赤に染めあげている最中で。
みるみるうちに赤くなっていくキャプテンがわからなくて、もしかして風邪でも引いたのかと、散々酷い扱いをされたのに心配をしてしまう自分が憎らしかった。
「ね、熱でもあるんですか?」
「なんでもないから早く出てけといっただろ」
「でででででも…」
「―――っ!!出てけ!」
「は、はいっ」
大慌てでキャプテンの部屋から出て、そのまま扉を背にしてへたり込む。
なんだかよくわからないけど心臓の音がバクバク言っていて気持ち悪いし、キャプテンの顔真っ赤だし、心なしかキャプテンからも早い鼓動が聞こえた気がするし。
知らないことばかりが数分の間に起きて、混乱してしまった。
でも、なぜだかわからない。
心がとても温かい気がする。
トクトクと落ち着きを取り戻し始めた胸を押さえて、気づけば口からは笑みがこぼれていた。
世界が笑うとき
(答えはこんなにも早く見つかった)
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あけおめです!
そろそろお互いを意識し始めてきました!!←
体だけですがね(なんかそれやだ)
090118