メール送信
to.光
画像一件添付
“さて私はどこでしょう？”
片思いの後輩にメールを送る。
特に意味はない、ただちょっと暇だったから。
添付した画像は、この前修学旅行で沖縄に行ったときの、ホテルの裏の砂浜で撮ったクラス写真。
あたしが今送ったのは、その時他クラスの子にケータイを渡して撮ってもらったもの。
あたしは写真を撮る直前まで、白石と謙也と三人でビーチテニスなるものをやっていたので、男子と女子がくっきり分かれている中、ぽつんと男子の中に白石と謙也に挟まれて写っている。
しかもほぼ真ん中なので、めちゃくちゃ分かりやすい。
すぐにケータイが震えてメールの受信を知らせる。
メール一件受信
from.光
“一番左はじに写っとる、ちょお背の高いショートカットの人ですか？”
…一番、左はじ…？
……それ、担任なんですけど。
しかも担任男なんですけど。
あとそれはショートカットとは言わない、人はそれをハゲと呼ぶ。
メール送信
to.光
“違います。
もう一度探してください。”
…分かってるよ、わざとだろ？
こいつは変なところでボケるからたまに分からなくなる。
メール一件受信
from.光
“じゃあ左下のめっちゃ髪の長い人ですか？”
…ん？
左下…
髪の長い…
…そんなやついねーよ。
ていうか左はあたしを抜かせば全員男子だ。
…何を見たんだこいつは。
恐ろしい子だ。
そのとき、まだ返信していないのに一件メールが入った。
メール一件受信
from.光
“この一番右の人って、二年に彼氏居りますよね。
俺の友達なんすけど、綺麗な人っすね”
…あー。
確かこの前そんなこと言ってたな。
そーか、彼氏は光の友達だったか。
メール送信
to.光
“そうそう！
この子も前そんなこと言ってたよ。
可愛いよね！”
光が女の子の話するのなんか初めてだから、ちょっとびっくりだ。
少し時間をおいて、またケータイが震える。
メール一件受信
from.光
“それとその隣の人、ちょお前に雑誌に読者モデルで出とった人ですよね。
あと一番右下の人も、テニスうまいんで有名なんで知っとります。”
…………………
なんか女の子の話しすぎじゃない？
ていうかむしろ女の子の話しかしてない。
確かにみんな可愛いし有名だけど、あたしと一緒のときこんなほめてくれたことあった？
…相手は友達だけど、嫉妬、した。
それであたしのことは結局見つけたの？
メール送信
to.光
“話が脱線したね。
ちゃんとあたしのこと見つけた？”
…あれ、なんかあたしうざい？
いやいや、光がひどいだけ…ということにしておこう。
それから二時間待っても、光から返信はなかった。
もしかしなくても…寝たな。
話が本題に入ったとたん寝やがって…
前半あんだけボケといて。
これ多分、明日の朝まで待っても返事来ねーよ…
…よし、電話しちゃえ！
思い立ったらすぐに、あたしはケータイの電話帳を開いた。
光と電話したことはないけど、やっぱりなんか寂しい…っていうか悔しいから。
電話の呼び出し音が聞こえる。
5コール、6コール…そして10コールくらいまで待つと、ようやく音がやんだ。
「……はい」
…あ、これ完璧寝てた声だ。
あたしの電話で起こされた感じだ。
『光、あたしだけど。
…寝てた？』
「…………………」
こら、通話のまま寝るな。
『メール…あたしのこと見つけた？』
「…ああ…はあ」
『ほんとに？』
「はあ」
なんかえらい適当だな…
『ていうかさ…女の子、詳しいんだね』
「…は？」
電話の向こうでごそごそ聞こえる。
多分布団かけ直したりして、このあと本気寝するつもりなんだろう。
「…まあ…友達の影響っすわ」
『…あたしのことも見てよ』
「見たやないすか」
『そうじゃなくて……………』
「…………先輩？」
『…あたしだけ見てよ』
その後しばらくの沈黙。
何も言わないというか、言えない。
自分がうっかり漏らした一言の重大さに今更気づいて。
「…俺が先輩んことだけ見とるんはいつものことでしょ。
たまにちょっと他の人の話してもええやろ…」
『そういう問題じゃな………え？』
「わかったならもう電話切らせてください、俺眠いんすから」
『ちょ、待っ』
ブチッ
半ば無理やり電話を切られる。
あとにはツーツーとむなしい音が残るだけ。
『……見て…た？』
あたしは顔が熱くなるのを感じた。
あたしだけ見て
(光っ！
昨日の電話の話だけど…)
(電話？
俺寝ぼけとったんで覚えてへんっすわあ)
(…………………)
最近の子はメールと電話とか電子機器に頼りすぎだよね(^^)←
というか未姫さま、お待たせした上にこんなんで申し訳ありません(;ω;)!!
ThaNk Y0u F0R ReQueSt!
2009.11.12 Dear:未姫さま