りくえすと

□作戦s
1ページ/1ページ






「お嬢さまァ
頼んますよ、
ここ開けてください」



私と白石蔵ノ介は、
お嬢さまと執事という間柄だ。
それ以上でもそれ以下でもない。



「お嬢さまァー?
そこに居るんはわかっとるんですよ、早よ開けな俺も怒りますよー」



『…………………』




年も近く、小さいころはよく二人で遊んだ。

それゆえか、私たちは「お嬢さまと執事」という関係にありながら、非常に気安い仲である。


…個人的には、
もういっそその壁を取り払ってしまいたいのだが。



理由はもちろん…


…あいつがすきだから。





「…おい、今すぐ開けんとこのドア蹴破るで」




Σえええええ((゜д゜;))

豹変。
態度明らかに変わったよいま。
「お嬢さま」から「おい」に変わったよ。








どーん








『Σ(((゜д゜;)))』




突然、部屋のドアは大きな音を立てながら前に倒れた。




「…ふー、

この部屋のドアて木製なんや、
普通に倒せるから焦ったわー」



いやいやいやいや。
焦ったのはこっちだ。


まず謝ろうぜ?
他人の部屋のドアを大破させたことを謝ろうぜ?






「…あ、コップの水、若干こぼれてもうた。






…ま、ええよな」



Σ良くねえ
…何がいいのか私には理解出来ません。



蔵ノ介は持っていたお盆を枕元という非常に不安定な場所に置いた。

正直やめてほしい。


のぞき込むと、コップの水は三分の一程こぼれていた。


…床…




「…まったく、ハラ痛いなら痛いてさっさと言いなや。
せやからまた俺が高校休んでまでお前の世話せなアカンようになんねん」



『…………………』




そう、私は今日、腹痛のため学校を休んだのだ。
親の前ではただ、「気分がすぐれない」という理由で欠席の許可を得たが、
なぜかこの男にはバレバレで…


…ああ、アレか。
あたしがあまりにもトイレと自室を往復するからか。

だとしたら、かなりはずかしいな…







「…なんで腹痛て素直に言わへんの?

それが理解できひんのですけど」



『だって家の腹痛の薬、すっごい苦いんだもん!

あれ飲んだら少なくとも、その日一日は漢方薬の味が消えないよ』




一応粉ではなく錠剤だが、これがもう、顔が歪むほど苦い。

一番最初に飲んだときは、味が気になりすぎて吐いた。


もう錠剤の表面の色からして、深緑のすっごいまずそうな色。



そんな錠剤が二粒、お盆の上に乗っかっているから困ってるんだ。




「ほら、薬と水持ってきましたから、さっさとこれ飲んで休んどってください」



『嫌』



あたしは起き上がりベッドの上に座る。



「あーもう、またあぐらなんかかいて!
一応社長令嬢なんやから行儀良くしてくれな困りますわ!」



『どうせ部屋の中じゃん…』



蔵ノ介はあたしの頭をぺちぺち叩く。



「はい、水と薬」



『イラネ』




あたしは蔵ノ介に無理矢理させられた正座に不満そうな顔をしながら、そっぽを向いた。

何が良くて、自室のベッドの上で正座などしなきゃならないんだ。




「そないなこと言っとらんで早よ薬飲みや」



『イラネ』



「薬」



『要らないってば』



少々続くあたしと蔵ノ介の言葉の格闘。
これだけは譲れない。
薬なしで腹痛が治ることを証明してやる!






「…しゃあないなあ…」



『は?』



あたしが聞き返すと、蔵ノ介はお盆にのっていた薬と水を、ぐいっと口に含んだ。



そして、







『?!』





危険を感じて後ろにさがったあたしは壁に追いつめられ、
左のほっぺたを押さえられて…

次の瞬間、蔵ノ介の顔がすごい近くにきて。









…こくっ










『…ぷはっ!』



口に流し込まれたそれを喉を鳴らして飲み込むと、
蔵ノ介は満足そうに自分のくちびるを離した。




「…にがっ


ちょっと溶けてもうたな…
…効くんやろか、これ」




口内に広がる漢方薬特有の苦味。

しかし今はそんなことどうでもよかった。


あたしは、今…




「…そんじゃ、俺はこれで。


薬は飲ませたからな。
…口移しで」




何事もなかったように閉まるドア。



ここまでして効かなかったら最悪だ…


…蔵ノ介の口の中でちょっと溶けてる時点で、効く確率は少ないけど。



ていうか今あいつ、…












…口移しで




(…効かねーし)

(どんまい、
でも愛は効いたやろ?)

(いや、意味わかんないし)






ほんとに
意味わからない\(^o^)/





ThaNk Y0u F0R ReQueSt!

2009.03.19 Dear:美月瑠葵さま

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ