りくえすと

□作戦e
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『ひかるー』






あたしは今日も、暇だ。






「…なんすか」



だからこうやって、
いつものたまり場であるテニス部部室に入り浸っているわけです。

もちろんあたしは
ここのマネジャーでも
何でもない赤の他人なんだけど。



『ひかるってば。

ねえ、なにしてるの?』



あたしは部室に置いてあるパイプ椅子に腰掛けて、マイスイートハニー光に極上の笑顔で問いかける。



「…見てわからへんのですか?
ラケットテープまき直しとるんです」



…ああ。
相変わらず冷たい。


ていうかきみ、なんでそんな目であたしを見るの。
邪魔で邪魔で仕方ないと目が語っている気がしてならない。


…いつものことだけど、悲しい。



『あっそうだそうだ聞いてー

今日の英語の授業ね、課題の英作文回答したんだけどねー』



あたしはここで毎日、
その日あった楽しい出来事を彼に話す。

それの大半は、アホな謙也の失敗話だったりする。



「うんうん」



『謙也が当てられてね、あいつすっごいアホな間違いしてんの!』



「へー」



『“私のおばあちゃんは
少女時代名古屋にいた”
っていう文でねー』



「うんうん」



『“おばあちゃん”て
“grandmother”じゃん?

それを謙也、
“groundmother”とか
書くんだよ!
地面じゃねえよ!みたいな!

ねえアホじゃない?』



「へえーそうなんだー」



『…………………』



お前さ、絶対聞いてないだろ。
適当な返事ばっかりしやがって。
最後とか完全に
噛み合ってなかったよ。



『ちゃんと話聞いてよ。
…寂しいじゃん』



「先輩が勝手に部室入ってきて
勝手に話し始めるんやから
俺は別に知らへんし」



『……………………』



…あーあ。
意識されてないんだなあ…


ここへきてまた急に悲しくなる。
実際光はあたしのこと、
ただのうざい先輩くらいにしか
思ってないんだろうけどさ。


胸がきゅーんと切なくなった。
叶わない恋ってやっぱ、
つらい。



「…先輩?
何黙っとるんすか?」



何も言い返さないあたしを心配してくれたのか、光がテープを巻く手を止めてこっちをみてる。


やばい……

泣きそう。



『……なんでもない、よ』



「…………………」



うつむくあたしの顔を、光は無言で首をかたげてのぞき込む。



「…何泣いてんすか…」


光は口調も変えずに言う。
ああ、
めんどくさいとか、
おもってるんだろうな…

そう考えたら、涙はやっぱり止まらなくて。



『……かまって、よ…
ひかるに冷たくされると、
あたし、泣きそ…』









光が、「もう泣いとるやん、」
てあたしのほっぺをつかむのと、
あたしが同じように心の中でつっこんだのはほぼ同時。



光によって無理矢理
正面を向かされたあたしの顔は、
涙でぼろぼろ。

びっくりしたのと
恥ずかしいので
顔があつくなる。







「……かまったら先輩は、
謙也くんの話やめてくれますか?」







その真っ赤な顔と、
目は合わない。

でも気持ちはちょっとだけ
近づいた気が、した。











かまって




(謙也くんの話ばっかするから
冷たくしとるのに。
気づいてへんのやろか、
このひと…)

(…え
それってそれってそれって)






二人とも、片思いと思い込み。

ヒロインが泣いたのは
茉莉も予想外(^ω^)←

そして謙也はやっぱり汚れ役(∀)






ThaNk Y0u F0R ReQueSt!

2009.07.18 Dear:皐月さま

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