『ねえ。謙也』
あえて彼の後ろにまわるのは、
これを聞いたときの
彼の驚いた顔が一番
楽しめるから。
この暑いのに相変わらず、
可愛くないこと
たくらむあたし。
でも一つだけ、
こわくてこわくて
想像したら
泣き出しちゃいそうな
ことがある。
「なにー」
『ちゅーしよっか』
「…………えっ」
みるみるうちに
真っ赤に染まる
彼の顔。
それが夕日とならんで
さらに赤みが増す。
この瞬間がたまらないの。
「なっ…おま……
…ち、ちゅーて…!!」
……ある意味そこらへんの
女の子より可愛いよ、謙也。
『冗談だし。
毎回赤くなって
可愛いね、謙也』
「……………………」
無言でまた歩き出す謙也。
謙也くん謙也くん
わすれもの。
顔が真っ赤なままだよー。
「…なんやねん、
冗談冗談てアホちゃうか」
それに毎回騙されるキミは
あたしの数倍アホちゃうか。
『…謙也ってアホかわいいよね』
「…あ、アホ…?!
ちょ、アホかわいいて
どないな意味やねん！
新出単語か！」
『そのまんまだよー』
謙也はそうやって抵抗するから
いじられるんだよ。
最も、あたしのは
愛情からだけども。
「…ったく、
いっつもいっつも冗談言うて…
俺はお前のおもちゃじゃ
ないっちゅーねん」
『なあに、したかったの？』
「…へ、なに？」
『キス』
ようやくおさまりかけた
頬の赤みも、あたしの言葉により
再び戻ってくる。
…ね、もう謙也、
女の子でいんじゃないの。
「アホ！
そないなわけないやんけ！
そろそろ俺怒るで！」
どうぞー
是非怒ってくださーい
…とは、さすがに謙也に
嫌われそうなので言わない。
でもね、まだあたし、
いじり足りない。
『ごめんねー
あたしもさすがに
謙也のファーストキス
奪ったりしないよー』
「…なっ！
ふ、ファーストキス?!」
『え、ちがうの？』
「………や、ホンマやけど」
…よかった…
したことあるとか言われたら
どうしようかと思った…
『…謙也としたいな…』
「…え?!」
自然と口からでた言葉。
言葉足らずだけど、
いくら鈍い謙也でも分かる意味。
『……あ、えっと…』
今度はあたしがあたふた。
二人して真っ赤な
あたしたちの顔は
きっと暑さのせいでも
あの夕日のせいでもないね。
もうやけくそだ！
『…あたし、謙也と
キスしたい、な…』
半ば消え入りそうな声で伝えたあとは
顔を上げることも出来ず。
こわいこと。
あなたがあたしから
離れてしまうこと。
分かってたはずだったのに。
友達でよかったのに。
「……上、向きなや」
震えながらゆっくりと
目線を上げた先に見たのは、
君の多分あたしより真っ赤な顔。
ファーストキス、
奪った夏の日。
ちゅーして
（謙也、キスへたくそだね…）
（こんなこともあろうかと
この前まくらで
練習したことは
絶対ひみつや……!!）
すいません。
ほんとすいません。
こんだけ待たせたくせに
謙也をヒロインにして
すいません。
つーかよく考えたら
最後謙也、結構変態だよね。
なに予想してたんだろうね。
夕日が見えるのに
そんなに暑かったのかな？
中3にもなって
「キス」を「ちゅー」
とか言わせるのは
気がひけたので自重。
若干言わせてるけど。
ThaNk Y0u F0R ReQueSt!
2009.07.26 Dear:朔さま