りくえすと

□作戦b
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「右…右…右……
よっしゃ丁度ええ」



学校帰りに好きなひとと二人で寄り道したゲームセンター。


お目当ては期間限定の巨大UFOキャッチャー。



「まっすぐ…まっすぐ…
あーアカン行き過ぎや!
まっすぐ言うたやろドアホ!」



謙也……このUFOキャッチャーはたぶんまっすぐしか動かないと思うよ。

あと行き過ぎたのは機械のせいじゃなく謙也の腕の問題……




あたしは暗くなってあたしたち以外客の居なくなったゲーセンの中をぼーっと見渡す。


あ、もう8時近いんだ…

家帰ったら怒られるかも。

けど謙也楽しそうだしなー…



好きなひととゲーセン。
でもそれは友達として。





「取れた!」



急な大声にびくっと肩を震わす。



「なあ、見てや!
でかいの取れたで!」



ちらりと見ると、でっかいくまのぬいぐるみが謙也の腕の中でふわふわしていた。



『すごい謙也!一回目なのに』



「せやろ?せやろ?」



謙也はもっとほめてと言わんばかりにぬいぐるみを見せつけてくる。

それ以上ほめられる点が見つからなかったあたしは、



「すごいね!プロいね謙也!
将来その道めざせば?」



どの道やねん。



…と突っ込みたくなるほど適当なことを言って、ぬいぐるみの頭をなでておいた。


取り敢えず謙也が嬉しそうだったので良しとしよう。



「うはー
めっちゃかわええわこいつ!」



謙也はくまを高い高いの位置に抱き上げた。



「なあなあ!
こいつの名前どないしよ?」



『…えっ』



うーわー
謙也ってぬいぐるみに名前とかつける人なんだ…


…と若干引いた反面、


なんか子供の名前決めてるみたいだな…


…と意味不明なところで照れてる自分がいた。



『えーとプーさん』



「えーあいつ黄色いし服着とるやん」



黄色いのはだめなのかい?
くまは服着ちゃいけないのかい?


着目するポイントがちょっとおかしい謙也くん。

あたしに言わせれば下半身裸も全裸も同じ変態だと思う。



「わかった!
こいつは今からピグレットや!」



それ豚のほう。
絶対少なからずプーさん引きずってるよね、それ。






「ピグレットー」



謙也はくまをぎゅーと抱きしめる。

そんな謙也がくまよりとてつもなくかわいく見えて、思わず




『いいなあ…』




…つぶやいてしまった。



「何が?
ピグレットはやらんで!」



『いや、うんそっちじゃなくて』



…謙也は鈍感でした。



しかしその帰り道も終始くまといちゃつく謙也。

それをうらやましそうに凝視するあたし。



「…なんやさっきからこっちばっか見て。
そんな欲しいなら……やろか?」



うん、いま明らかに迷ったね。
別にいらないからいいけど!



『んー…だからそっちじゃないんだよね』



「どっちやねん」



…まるで分かってくれません。



『ぎゅーのほう』



「牛……?」



ああ、もうこいつ駄目だ。



『…くまになりたいよ謙也』



「くまに………あっ」



ようやく気づいた謙也。
逆に今ののほうが遠回しだったと思うんだけどな…





「…や、え、と」



…顔真っ赤ー。
実現不可能な冗談のつもりが、逆に彼を困らせてしまった。


かといって今更嘘だと言う度胸などあたしには持ち合わせていなく。


それを口にしてしまった後悔から、あたしの目線はだんだんと下がっていき、ついには自分の足しか見えなくなった。


おたがいうつむいて時が過ぎる。






「え、えと、その、…





…ど、どうぞ……」







控えめに両手を広げた彼。

後悔したぶん、
それがたまらなく嬉しくて、
その言葉に甘えて飛び込めばおそるおそる抱き返し、背中から上に伸びてくる手。


くまはぼとりと下に落ちた。




くまなんかより断然幸せな、今のあたし。















ぎゅーして





(くまより抱き心地
ええかも、これ…)

(いつ離れたらいいの、これ)











意外とぎゅーを堪能してる謙也と、はやく解放されたいヒロインちゃん。

立場逆転そしていつも通り謙也は変態。


最終的になんか0からのスタートみたいになりましたorz


書いててほわんとしました
ありがとうかぐらさま





ThaNk Y0u F0R ReQueSt!

2009.08.14 Dear:かぐらさま

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