いつも通り学校に来て、
いつも通り教室のドアを開ける。
でも今日のあたしはいつもとちょっと違う。
『おはようっ!』
「おはよー……あれ?
今日なんかいつもよりかわいい!」
ふふん、そうだろうそうだろう!
調子に乗って、一人優越感にひたる。
『ちょっと髪巻いて、まつげ上げてみたんだー』
「へー!すごい似合っとるで!」
クラスの女の子たちが、かわいいとほめてくれる。
それも嬉しいけど…
…あたしは自分の席に向かった。
今日、特に何があるわけではない。
ただ…あいつにかわいいって言ってほしくて。
隣の席のあいつに。
『おはよ、財前』
あたしは平静を装って席に座った。
財前はいつも通りiPodで音楽を聞いている。
そしてちらりとこっちを見て、
「…はよ」
………あれ?
『……うん……』
………あれれれ?
いつもと違うどころか、全くいつも通りなんですけど…
…あ、もしかしたらあんまりよく見えてなかったのかも!
こっちを見てほしくて、必死に話題をふる。
『ねえ、昨日の部活は何したの?』
「…は?何、急に」
財前はだるそうにイヤホンを外して、こっちを見る。
『いや……なんとなく』
「……昨日は月曜日やから練習なかったけど」
『……あ…そか…』
会話終了。
なにこれ……ぐだぐだ。
てゆうか!
今明らかにしっかりこっち見てたよね?
……スルーですか?
『……いいよ。もう』
あたしは席から立ち上がる。
こいつ、鈍感すぎ…
「は?…ちょ、おま……」
横から財前が何か言いかけるけど、もう知らない。
あたしはつかつかと教室の出口に向かって歩き出した。
隣のクラスの友達のところへ行って、ストレートアイロンを借りる。
あたしの髪を見て不思議な顔をする友達を尻目に、あたしは女子トイレに向かった。
…追いかけて来もしない。
いや、別に付き合ってるとかそういうのじゃないし、あいつの性格からして、追いかけてきた方がびっくりだけどさ。
『…今日はきれいに巻けたのにな』
朝のHRが始まり、誰もいなくなった女子トイレの鏡の前で、つやつやにウェーブのかかった髪をまっすぐにしていく。
…なんか、勝手に頑張って空回って、勝手に機嫌悪くして、……まるであたしピエロだな。
よく考えてみたら、こんなの大したことない。
それだけ相手にされてないってことだし。
そう思ったらまた、悲しくなった。
教室に戻るとまた友達が集まってきて、
「大丈夫?」
「具合良くないん?」
「あれ、髪戻したん?」
などと声をかけてくれたが、それもすべて適当に返す。
一限が始まるまであと少し。
ちらりと席を見ると、隣の席に若干驚いた顔の財前がいた。
あたしはまた平静を装い席に着く。
隣からの視線が痛いのは、きっと気のせいだと強がる。
そして一言も話すこともなく一限が始まり、国語の先生が入ってきて授業を始める。
そして10分、20分と時間は過ぎ、授業が終わるまであと五分となったとき。
「…髪、戻したん」
…何をいまさら。
さっきはその話にふれもしなかったくせに。
あたしは当然のごとく無視する。
「…もったいな。
かわいかってんに」
バサバサバサ!
机に乗っていた教科書、辞書などが一斉に机から落ちる。
それらを拾うのも忘れて、あたしの視線は彼から離れない。
『…いま何て?』
「…さあ。…二度は言わん」
…いつもなら『は?何それ!』ぐらい言うところだが、そのあと下を向いて教科書を拾い集めるあたしは、今までになく笑顔だった。
かわいいって言ってよ
(…巻き髪って、ええかも)
(明日また巻いてこよっと!)
財前が、つんでれかもしれない。←
てゆうか今回また
おねだりしてないね\(^o^)/
ThaNk Y0u F0R ReQueSt!
2009.11.12 Dear:里奈さま