りくえすと

□作戦p
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わがままだと思われてるかもしれない

でもそうじゃないと

きみが気にかけてくれないから

…でも少しくらい

叱ってくれたっていいのよ?












『ひかる』



「…何」



かったるそうに、隣の席でぱらぱらと雑誌をめくる光。

耳にはiPodのイヤホン。

どっちかにしろよと言いたくなる。



『今日クレープ屋さん行きたい』


あたしはちゃんと光の方だけ向いて話すのに、光の目はちっともあたしを見てくれない。



べつに付き合ってたりとか、そういうんじゃない。

だだあたしが一方的に付きまとってるだけ。


…自分で言ったことだけど、なんか悲しくなってきた。




「…今日は白玉ぜんざいの気分やねん。
残念やったな」



一度だけちらりとこちらを見るも、その視線は再び雑誌に写るNIKEの新作スニーカーに注がれる。



『いっつも同じこと言う!
それしか好きなものないの?!』



「一番それ好きなだけや。
そないなこと言うけどな、いっつもお前が行きたいとこに合わせとんの誰やと思てんねん」



『…それはそうだけど』



光は甘党だ。
あたしも甘いもの好きだから、それを知って今では色んなお店に誘って一緒に食べに行ったりしている。

…毎回行きたいお店の意見が食い違うけど。



「…しゃあないな…

…今日部活終わったら、校門のとこで待っときや」



『…うん!』



光が呆れたようにため息をつく。


…まあこんな風に、いつも光があたしに合わせてくれるから、小さな言い争いはたびたび勃発するものの、今までそこまでひどい喧嘩はしたことがなかった。



そして放課後。









『…こない…』



部活終わったら、って言ってたから約束の場所で待ってたけど、下校時刻を過ぎても、光は来なかった。


あーあ、もう7時回っちゃったじゃん…

今日行く約束をしたクレープ屋さんは、7時で閉まる。

要するに今日はもう、だめになっちゃった、ということだ。





…もうすぐ7時半になる。
光はまだ来ない。

光は約束破ったりとか、そういうことはしない人だ。
でもよく考えたら、もう待ってる意味なんてない。


…帰ろっかな。


そう思い始めたとき。


駐輪場のほうから、一台自転車が走ってくるのが見えた。

でも光は歩きだって言ってたから、違う。

再び門に背中を預けて地面を見た。



キッ、と、自転車が目の前で止まった。

誰かと思い顔を上げると、



『…光…』



光が自転車の脇に立っていた。



「すまん、部活長引いた。
こないに待たせて…」



『…べつに。
もういいよ、お店閉まっちゃったし』



「…すまん」



もう一度、光はあやまった。

それなのにあたしは、そっぽを向いていじけたまま。



「…先輩からチャリ借りてきた。
後ろ乗りや」



『いい。帰る』



バッグをもって立ち上がり、歩き出す。

光は自転車を押して、それについてくる。



「…荷物持つ」



『いらない!』



光の気遣いもはねのける。

光もむ、と眉を寄せた。



「確かに俺も悪かったけど、その態度はおかしいんちゃう?
クレープ屋なんかまた別の日行けばええやろ」



『…何、その言い方。
もういい、知らない!』



頭に来て走り出す。
重いバッグが右肩を引っ張って、うまく走れない。




ちょっと走ったところで、ちらりと横を見ると、



『………………』



余裕の表情でチャリをこぐ光の姿があった。



『なんでついてきてんの!
光道ちがうでしょ!』



「べつに、今日はこっから帰ろ思ただけ」



必死の形相で走るあたしと、涼しい顔でチャリを走らせる光。
はたから見たら、どんなにおかしい光景だっただろうか。





『…っきゃ!』



隣ばっかり見て走っていたら、足がもつれた。

ずさ!と前に転ぶあたし。

地面と顔を突き合わせて数十秒。



「…あーあ…何アホなことやっとんねん」



前から足音とともに光の声が降ってきた。



『…アホじゃない』



「アホや。立てるか?」



手を引いて立ち上がらせようとしてくれる光。



『…やだ。無理』



地面にぺたんと座り、子供のように駄々をこねる。

…こういうところがあたしの、悪いところ。

わがままなところ。



「…ここからお前ん家近いやろ。
ほら、チャリ乗りや」



『…足いたい。乗れない』



「…はー」



ため息をひとつ。
光がかがんで、おんぶの体勢をとる。



『…おんぶは嫌』



「…ほなどないしろっちゅーねん」



光がまた立ち上がって、呆れた顔をする。

ああきっと、あたしのことめんどくさいやつ、とか思ってるんだろうな。



『…おひめさまだっこがいい…』



呟くように言った。



「冗談言えや、あれ結構きついんやぞ」



『…して』






ちょっと間が空く。

光がまたため息をついて、近づいてしゃがみ込む。

そしてしゃあないやつやな、と声がしたかと思うと、急にふわ、と体が浮いた。



「これでええんやろ?」



顔が近い。

一気に熱が顔に集中して、返事もせずに下を向く。

なんや、お前がしろ言うたんやろ、と悪態をつく光。

してもらってから気付いた。

おひめさまだっこって、は、恥ずかしい……!



「チャリどないしよ。
…乗り捨てでええか、謙也くんのやし」



いいのか。

顔も知らない謙也くん、ご愁傷様です。










『…ひかる』



「何」



『明日は甘味処、いこ』



「…おん」













おひめさまだっこがいい!




(…お前ってやっぱわがままやんな)

(かわいいのまちがいでしょ)






ワールドイズマインみたいな(^ω^)

白玉ぜんざいって具体的にどこ行けば食べれるんでしょうね?
分からなかったのでとりあえず甘味処と書いておきます




ThaNk Y0u F0R ReQueSt!

2010.03.15 Dear:沙樹さま

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