01/18の日記

22:14
ホムンクルス -小さき者-
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飛鳥(妹太)+冥界





空を見上げて思うのは、僕等の小ささ
海を見下ろし思うのは、僕等の愚かさ

「また戦が、始まる」

僕等は、この世界の一欠片でありながら

僕等の生はあまりにも単調で
僕等の死はあまりにも容易で

「何故、争わなくてはならない?」

僕等が、この世界に与える影響は

僕等に対してあまりにも強大で
僕等に関してあまりにも兇悪で

「いっそ、私を殺せば、いい」

小さき者は、恩恵を忘れ世界にのさばる
小さき者は、加護を忘れ世界を貪る

「私の存在が悪いのだ。違うか?」

結果して、互いの血を絶やしていこうとも
終結にて、世界の全てを暗鬱で満たそうとも

「そうなんだろう?妹子」

けして迷いもせず、破壊の道を進んでゆくのだろう

「嗚呼、ああ、あ、あぁ、あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

そして僕等もまた、この乾いた血の道を更なる血で覆いながら
破滅の道を歩んでゆくのだろう

「ぁぁぁぁぁ…ぁ、あぁ、あ、ああ」

空を見上げて思うのは、僕等の小ささ
海を見下ろし思うのは、僕等の愚かさ

「あ、あぁ、ぁ、ぁ」

そう、僕等は現代の淀んだ世界が産み堕とした人造人間





哀れな貴方は薬で眠っている。
もう優し過ぎる貴方が苦しまなくていいように、唇を合わせて甘い毒で浸しましょう。僕はきちんと手を繋いでから、その後を追いますね。
たとえ、行く先は違えども、最期までお供致します。

さようなら、太子



「おやおや、自ら命を絶とうだなんて悪戯が過ぎるんじゃない」
「誰だっ」

半身が闇に溶け込んだ黒衣の男は、にしゃりと微笑った。口の端だけ吊り上げる嫌な笑みだ。
黒衣の男の背後に佇むもう一人の男は闇に浮く不自然なまでの銀色で、臨戦の意思を示す為に刀を構えた僕に対して、威嚇するように爪を伸ばした。人ではない。
嫌な汗が吹き出、身体を冷やしていく。勝ち目は見えない。それでも、これ以上この高貴な人だけは傷付けさせない。…護ろう、この命尽きるまで

「どうやって此処まで入り込んだか知りませんが、太子に手を出すことだけは許しませんよ」

人間の抵抗等には興味の欠片も抱かぬ闇は、小さく微笑って、赤き武人に手を翳した。

「生きなさい。死ぬにはまだ早過ぎる」





「妹子、朝だぞ。お寝坊めっ」

変わらぬ青と微笑みを振りまき、朝から騒がしい愛しい主君。酒瓶が散乱する部屋。妙な感触がする頭痛。
そうだ、昨夜は久しぶりに呑んだんだっけ。最近嫌なことばかりで、太子が落ち込んでばかりだったから。

ちらりと主君の姿を確かめる。ずっと塞ぎ込んでいるばかりだった優しいお方は庭先を裸足ではしゃぎ回っておいでだ。陽光の眩しさに負けぬ、高貴な人。護ろう、この命尽きるまで…

「…なんだか、とても長い夢をみていたみたいだ」







「何故、」
「ん?」
「何故、あの二人を止めたんです?自殺は大罪だからですか?」

黒衣の男はさも億劫そうに、愛しの穢れの疑問に応えた。

「まぁ、なんというか死なせるのが惜しかったんだよ」

冥府の王は、賢者しか持ち合わせない老翁のような面差しに、白紙しか持ち合わせない幼童のような微笑みを浮かべ、愛しの鬼の眼差しに応えた。

「二人とも本当に綺麗な魂なんだもの。もっともっと生きて、もっともっともっと穢れればいいんだ」













人間を愛し絶望する太子と、穢れから太子を解放する為に決意する妹子を、止めようとする慈悲深い閻魔に、より一層の世の無情を感じる鬼男…


 

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