06/18の日記

16:04
※Maria
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閻鬼
※性的表現有









情事の際、彼は避妊具の類を許さない。
情事の際、彼は精子を全て飲み干す。
情事の際、彼は


「…、美味しくないでしょうに」


今宵の彼も、やはり精子を飲み干した。あまりに従順な彼に無理をしているのではないかと、腹を下すからというような声を掛けるが、呆れる程に彼は拒むのだ。自分のソレが甘いお菓子の味がしたらいいのに、と馬鹿な思考がよぎったが、そんな愚かさを打ち消すような慈愛の笑みを浮かべて、彼は応えた。


「全て、貴方様の御子ではございませんか」


ぎくり、と肩が揺れたのは彼に対する罪悪感であったのだろうか。自分自身ですらわからない。


「僕が男でなければ、貴方様の御子として祝福され、お産まれになられただろう御子が、この中にはいらっしゃるのですよ」


彼は何処までも清らかな光で瞳を濁して、何時までも変わらない意志を携えて、神様みたいに微笑んでいる。


「僕にはどの方が貴方様の御子として産まれる定めにあったのかがわかりません。ですから、せめても、ただ一人だって取りこぼしたくないのです」


そんなことを君が気に病む必要はないのに。精子の一滴どころか、青一草の命を無駄にしたって神様は、天罰を与えたりなどしないでしょう?
全部死後に廻してしまうでしょう?今の君は死んだりしないのに。天罰なんて下るはずもないのに。


「たかだか…精子、でしょう?」
「閻魔大王ともあろう御方がそのように仰って下さいますな。何処ぞの誰かの身腹から産まれずとも、宿らずとも、辿り着かずとも、生物の細胞に刻まれた生存本能の赴くままに個体と成そうと足掻く様は、確かに生きている証拠にございましょう」


はらはらと泣く、小さな魂。

天上の神々だって、そこまで慈悲深くなんかなれやしないだろうに、なんて愚かな鬼の仔



嗚呼、誰よりも慈悲深い、君はMaria













 

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