短編部屋
□berlicche
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「君が悪いんだよ」
陽気な声で悪魔はそう言った。
「そう。君が殺したんだ」
目の前に転がっている屍。
悪魔は白い服を着ていたのに、真っ赤だ。
私が殺したの?
目の前の屍は冷たい目でこちらを見ている。
![](http://id12.fm-p.jp/data/188/miyu186927/pri/70.jpg)
「私が、やったの?」
そんなはずはない、と思いながらも確かめずにはいられない。
私じゃない。
だって私は見たもの。
目の前の悪魔が白い"何か"を放つのを。
「違う。私じゃない。あなただよ」
「ううん。君がやったんだ」
笑顔を絶やさない悪魔に、先程見たものが夢なんじゃないかと思えてくる。
「僕は見ていただけ。実際僕がやるつもりだったけど、君が先にやったから」
まさか、そんなはずは。
「彼氏を殺すなんて、なかなかできることじゃないよ」
私がやったの。
違う。
だけど悪魔は知ってたんだ。
私がこいつを殺したがっていたことを。
「…悪魔…こないで…」
近づいてくる悪魔に声をかける。悪魔は笑う。
「悪魔?」
「………」
「フフフ。僕のこと、ちゃんと分かってるじゃないか」
思わず顔をあげる。ちゃんと分かっている?
何を言っているのだろう。この男は。
まさか、本物の悪魔だとでもいうのだろうか?
「ねぇ。僕と一緒にこない?」
分からない。この男が。ついていってもいいのだろうか。
答えを求めるように屍をみる。
相変わらず屍は冷たい目でこちらを見ている。
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berlicche…イタリア語で悪魔という意味