書処

□渇望
1ページ/1ページ



ドアを開けるのすらもどかしい。
外界から遮断される前にもう、互いの唇は重なっていた。
バタン、とドアが閉まる音すら、耳には届いていなかっただろう。
そんな余裕などなく、身体は折り重なるように床へと倒れ込む。

ナルトが、いてっ、と小さく洩らしたが、その声もすぐにサイの舌に絡め取られた。
玄関前の床は固く冷たいというのに、既にナルトの下肢は曝け出されていた。
サイの両手は下着ごとそれを引き摺り下ろし、ナルトもまた抵抗はしなかった。

あ…と、零れ落ちた息の音は、たちどころに甘い吐息に変わる。
掌に包み込まれた部分が、性急に熱を帯びる。
勃ち上がっていくそれを視界に捉えながら、ナルトの頬は赤く色づく。
唇は何度も重なっては離れ、互いの唾液で顎の辺りまで濡れそぼっている。

「ナルト…」

低く、艶を帯びた声で呼ばれる。
サイの静かな墨色の瞳が、雄としての獰猛な欲を湛えているのを見つけて体温は上昇する。
サイが興奮していることで、ナルトは更に高まっていく。

「んあっ…」

ナルトの声は名まで形づくらない、溢れる音は嬌声と交わる。
ねじ込まれた指の痛みすらも、すぐに快感に変わっていく。
長い指に蹂躙されれば、じんじんと伝わる熱が体内を満たす。
焦れて麻痺した部分から、次々と欲望に絡め取られていく。

もう、待てない。
余裕がないんだ。

今夜は互いが欲しくて、欲しくて、沸き上がる情動に狂いそうになる。
前を寛げただけのサイは、下半身だけを剥き出しにしたナルトの脚を抱えあげた。
男としてはみっともない格好だ。
理性の欠片が残っていたなら、とても耐えられないような姿だ。
でも今は、ここから始まる悦楽の期待に震え、羞恥の付け入る隙間などなかった。

飢えて、渇いて、欲しくて、求め合って。
繋がった途端に、涙が溢れた。
喘ぐ声音は既に淫らだ。
切望したもので満たされる、潤う。
まだ青年に成る前の未熟な二つの身体は、もつれるように絡み、そして溶け合うようにぶつかり合った。

その若さゆえ、刻まれた欲が、時にこうして暴走して、抑えが効かなくなる時もある。
今夜は互いがそうだったのだ。
満たされるまで、満たされるまで、溺れて、貪り尽くしたい。

普段沈着なサイが秘めたその激しさを暴露するのは、それが自分だけに向けられた感情であることに酔う。
サイもまた、普段の爛漫な少年が、自分のもたらす熱によって艶めかしく乱れる様子に喜悦した。

愛も欲もまぜこぜになって、こんな扉一枚で隔たれた世界で、本能を吐き出す。
白く染まる。

そんな、渇望に苛まれた夜もあるのだ。





END





(09/10/12)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ