書処
□Kiss,Kiss
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ファーストキスの相手がサスケだったオレにとって、セカンドキスはぜってーサクラちゃんなんだと決めてたんだってばよ。
なのに、今オレはまさにそのセカンドキスも男に奪われようとしている。
サスケとは別の男だ。
こいつの名はサイ。
木ノ葉の中じゃ、知り合って日も浅い方だ。
なんで今オレはそのサイにキスされそうになっているのか。
…それはこいつがオレのことを好きだなんて言いやがるからだ。
……何なんだってばよ!
………う、言い訳がましいな、オレ。
イヤなら、止めろ!って突き放せばいいだけだ。
なのに、何で出来ない…いや、そうしないんだってばよ。
……考えるのが怖ぇ!
サイは左腕をオレの腰に回し、右手をオレの顔に添えている。
別に無理やり拘束されてるわけでも、術で縛られてるわけでもない。
チクショー…卑怯だってばよ。
いっそオレが逃げられねぇように墨の蛇ででもぐるぐる巻きにしてくれりゃあいいのに。
…って、何言ってんだ。
頬を撫で回すから、オレの顔はきっと真っ赤だ。
…撫で回すから?
……く、くそ、照れてるわけじゃねぇってばよ!
チ、チクショー!
サイの顔がすぐ前にある。
ドアップがたまんねぇ…。
焦点合い過ぎてぼやけてきちまう。
いっそ何にも見えなくなっちまえば…って、じゃあ目を閉じればいいのに、閉じれない。
つい、見てしまう。
目の前のサイから目が離せない。
オレと違って生っ白いサイの肌、キメが細かくてキレイだってばよ。
眉のラインはすっきりしてて、切れ長の二重で、真っ黒な瞳は…吸い込まれちまいそうだ。
うわ、唇がもう近過ぎるってばよ!
サイの息遣いまで聞こえてくる。
あ、あれ、何でオレの方が息が乱れてんだ?
ちょ、待て、お前が冷静過ぎるんだ、サイ!
唇…ふくよかなんだよな。
唇がふくよかなヤツは情が厚いって、昔どっかで聞いたってばよ。
ウソじゃねぇか。
こいつ、情厚くねぇってばよ?
………いや、違うか。
サイは感情を無くしてただけだ、情が薄いのとは違う。
そんなん言ったらこいつが可哀想だってばよ。
…なんて同情してる場合じゃねぇ!
オ、オレのセカンドキスが今まさに奪われようとしてる方が問題だってばよ!
「サ、サイ、ちょっ、待った!」
オレはサイの唇を掌で覆った。
サイは少しだけその黒目がちな瞳を見開いた。
うわ、ドキドキするってばよ。
今気が付いたけど、オレの心臓は壊れたみたいにドキドキドキドキうるさかった。
ナルト、って呼ばれた。
掌の下で、サイの唇がそうモゴモゴと動いた。
それがくすぐったいのと、息の生温かさがたまらずに、オレは掌を離す。
「ナルト、忍に待った、は…なしだよ」
そう言って目を細めて笑いやがったサイの唇が、ついにオレの唇に重なる。
心臓…マジでやばい!!
オレは目を閉じた。
夢中で閉じた。
力込めて、鼻の上まで皺が寄るくらい。
で…でも、力が抜けていくってば。
キスって、こんなんだっけか?
オレの記憶にあるサスケとのファーストキスは、こんなんじゃなかったってばよ…。
重なってはすぐ離れて…と思ったらまたすぐにくっついてきた。
上唇、下唇、まるで軽く噛むみたいに挟まれて、離れて、舌で舐めたり、音を立てたり。
力が抜けて、睫毛までが震えた。
オレの力は抜けていくけど、オレの腰を支えるサイの左腕には力がこもった。
頬に添えられていた右手は、オレの髪をあやすように撫でている。
長い…キスってこんなに長いこと、くっついているものなんだ。
ダメだ…。
もう……これ以上は………何も…………考えられねぇ……………。
END
(09/10/13)
ナルトが思考停止したところで終わり。サイとキスしてもいい、という気持ちに素直じゃないナルト、でした。でも自分の本音に自覚はあるのです。