書処

□絡まる指
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月明かりの差し込む部屋には、二つの影が揺れていた。
真新しいシーツは、ナルトが握りしめた部分と、体重を支えた部分に酷く皺を作っていた。

荒い呼吸と、吐息の合間に零れる甘やかな声が、ベッドの軋む音に混じる。

汗は絶え間なく体内から溢れ出した。
汗だけではなく、ありとあらゆる体液が流れ出ている。
身体の内側も外側も熱くて、カラカラに乾いてしまいそうだというのに、枯れるどころかナルトの体内からはとめどなく瑞々しい潤いがもたらされた。

「あっ、サイっ!」

たまらなくて名を呼ぶ。

「何?ナルト…」

繋がったまま首筋を伝う汗を舐め取っていたサイの舌が離れ、ナルトの呼び掛けに答えた。
それからサイの唇は、ナルトの目尻を滲ませていた涙すら舐めあげた。

「乾いちまう!」

そんなしょっぱいモノまで舐めやがって。
オレの水分みんなお前に吸い取られちまうってばよ!

言葉にこそしなくとも、ナルトは不服そうな表情で、自分の奥まで串刺しにしている男を睨み付けた。

「ちっとも乾いてなんかいないよ、ナルトの中…ずぶ濡れだ…」
「ばっ…か、このっ!」

熟れているナルトの肌が更に上気する。
言葉で苛めているつもりはなく、ありのままに口にしてしまうところが、サイの怖いところではある。

「さっきボクが出したものも、ほら…」

その長い指先で、密着した部分から白濁を掬い取る。
それはナルトの内側に吐き出した、サイの残沫だとわかっているので、指先を顔の近くにつきつけられ、ナルトは思い切り顔を背けた。

「そんなもん、見せんな…」
「見せたいよ。だってナルトの中に出したボクの愛情だから」

羞恥に染まる頬に、口づけを落とす。
頬から、輪郭を辿って、唇に届く頃には、二人の指は再び絡み合っていた。
細胞のひとつひとつまで、けっして乾くことはない。
心の奥底まで響くような情愛が、繋ぐ身体と身体を満たしていく。
二人は、渇くことはない。
むしろ、このまま互いが溺れていくことに、ほんの少しだけ懸念を残して…。
未だ互いに若くて、しなやかな肢体は大人になりきれていなくて、覚えたての情欲に溺れることに、罪の意識を残して…。
やらなくちゃいけないことはたくさんあり過ぎて、それを忘れたことは片時もないのだけれど。

「今だけは…」
「うん…」

時々なら許されるだろう。
夜の間だけは、全てを忘れて、ただただ衝動に流され情動に溺れて、渇きを癒して溺れてしまおう。
流されてしまうことはない。
そんなに愚かな二人ではない。

絡め合った指が、それを教えてくれる。
見失いそうになれば、この指がある。

それは信頼の上に成り立つ関係だと、無意識の中で分かっているのだ。







END





(09/10/10)


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