+徒然小説+

□昼下がり(幻水3)
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…太陽が中心からなかなか動かない。兎に角「猛暑」としか言い様がない気温。
そう、まるでじりじりと鉄板の上で焼かれているみたいだ。
「ふみゅ〜」
ヒューゴは完全にバテていた。
無理もない。毎日の様に探索に出かけ、暑いからといって食事は冷たい物ばかり。
サラダやアイス、漬け物etc。辛い物は元気が出ると言ったって、キムチではたかが知れている。
冷たい食事メインでは、肉や魚といった食品からほぼ離れてしまう事にヒューゴは全然気がついていなかった。
メイミの作る食事はそれでも満足感を与えてくれる位に美味しい。
…悪循環である。今ではフルコースやまんがんぜんせきなどを見ると、ヒューゴはそれだけで「ごちそうさま」と言って逃げていた。
そうなると体力回復には寝るしかない。
城の敷地内で木陰を探しながら、何時しかヒューゴは木に凭れて目を閉じていた。





自分でもうとうとしながら首が揺れているのが分かる。
そのリズムがまた心地よい。
こくこくと揺れながら、ヒューゴは夢を貪っていた。
不意にリズムが崩れ、がくんと上半身が揺れる。
分かっているけど起きられない。
揺れて何かにぶつかり、そのまま凭れかかる。
何だかその感触が安心できて。
ヒューゴは再び夢の淵へと潜りこんだ。





「……何、しているんですか」
「……見ての通りだ」
不機嫌そうにゲドは眉根を寄せる。
ジャックは下を見て、少し口元を緩めた。
「……俺、降りたいんです」
ゲドはジャックとヒューゴを交互に見て溜息を一つ零し、ゆっくりと自分に寄りかかって眠っているヒューゴの体を抱え上げる。
ヒューゴはかくんと首を肩に向かって反らした。しかし起きる様子はない。
腕の中の感触に、ゲドはじっとヒューゴの寝顔を見詰めた。
「軽いな…見た目より」
心なしか全体的に細くなった様だ。
ジャックがするすると降りてきてゲドの傍らに立ち、そっとヒューゴの顔を覗き込んだ。
「・・・・・・・・・かわいい」
その言葉に弾かれた様にゲドが反応する。
「それをヒューゴの前で言ってみろ・・・」
ゲドは顔を真っ赤にして怒るヒューゴを想像した。
ジャックは明後日の方を向いて黙っていたが、いきなりゲドを振り向いて言った。
「・・・・・・・・それも、かわいい」
ジャックもその姿を想像していた様だ。
ゲドは明らかに動揺した。じっとジャックを見据える。目が・・・座っている。
「・・・・・・・・・俺は、もう行くぞ。お前もちゃんと部屋で寝ろ。日射病になる」
そう言い置くと、ジャックに背を向けてずかずかと足音高く(?)去っていった。
「・・・・・・・・・・・・やっぱり、かわいいな」
そう、ゲドの腕に抱かれたヒューゴもジュリエットみたいで可愛かったのだが。
いつものポーカーフェイスからは見られない、ゲドの慌てぶり。
それが可愛かったのだ。彼としては。
そんなことを言ったら、ヒューゴに言った場合より嵐が訪れそうだ。
ジャックはもっと寝心地の良さそうな木に登り、さっきのゲドの反応を思い返して微笑んだ。
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