+徒然小説+

□刹那の輝き(魔人学園)
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「龍麻せんぱーいっ」

そう呼ぶと、先輩は僕を見つけて嬉しそうに目を細めた。
そんな顔を見ていると、戦いのはざまに見せる眼差しは信じたくないほど硬く、鋭利に思える。あの時、初めて出会った場所で見せた瞳もそうだった。

そう、僕は先輩に助けられた。正確には先輩達に、だけど。
あの時の京一先輩と龍麻先輩は、僕にとって奇跡の様に現れた。
正に先輩達と知り合えたのだから、『キセキ』だった。
京一先輩の雰囲気にさやかちゃんを付け狙っていた連中は立ち去り、暫く京一先輩をぼーっと穴が空く位見詰めてしまったのを憶えている。
そして思った。「この人の様になりたいと」。
自分の大事な物を、自分の手で守りたい。そう、確信した。
「京一先輩っっ!弟子にして下さい!!」
「…お、おう」最終的には気迫で承認してもらったような気がしないでもないけど、
兎に角嬉しかった。それだけ京一先輩は素晴らしかった。
また、このまま別れたくないと思う気持ちもあったかもしれない。
それは…何故だろう。




そんなことを考えながら、ぼんやりと真神の校門を目指していた。
初夏の暑いくらいの日差しに、あたりはすっかり紅く染められて。
「先輩達…もう帰ったのかな」
既に部活動の終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。学生達の姿も疎らみたいだ。
取りあえず校舎の壁に寄りかかって、ふぅっと息とはいた。
「暑いなぁ…」
このまま凭れて空を見上げていると、世界がくるっと回転しそうだ。
そんなことを考えていたら、視界が急激に暗くなった。
「おい、そんなとこで口開けて…。どうした?霧島。ん、熱射病か?」
不意に視界に飛び込んできたのは…龍麻先輩だった。幾分長めの前髪が、僕の額に降り掛かって何だかくすぐったかった。前髪の奥、隠された瞳に自分の姿を捉え、何だか嬉しくなる。そのまま見入っていると、龍麻先輩が僕の頬を軽くたたいた。
「大丈夫か、霧島。どっか涼しい所にでも入るか?」
「…京一、せんぱい…は?」思考もぼんやりと霞んでくる。太陽にあたられたのかな。
「今日は大会らしくてさ。副部長に引きずられていったよ」
ふっと龍麻先輩が思い出し笑いをする。そして、ひーちゃんーっ!と叫びながら連れ去られた京一先輩の姿をリプレイして見せた。
思わず僕は龍麻先輩の姿に釘付けになった。というか、予想外のものを見せられて思わず動きが止まってしまった。あんな龍麻先輩…見た事がない。戦いのイメージが強烈なせいか、その笑顔に僕はフェイントをかけられたような気がした。
「京一はいないけど…どうする?」龍麻先輩は僕の言葉を待っているみたいだ。
「…どこか…涼しい所へ行きましょう…先輩」
そう言ってふらっと壁から身を離した僕を、龍麻先輩は横から支えてくれた。
「ああ、とびっきりの場所に連れて行くよ」
僕は龍麻先輩に支えられながら、ゆっくりと目を閉じた。
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