+徒然小説+

□風花(魔人学園)
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それは、風花が舞う如月の月だった。 
そう…思い起こせば、「あの日」も寒い、冷たい雪が降り部屋で髪から滴る冷たい雫を受けた。
こんなに寒い日に失えば。心も必然と凍ってしまう。それが大切な物であればなおさらの事。
もう凍りたくない。心ではそう思うが、体はどんどん冷えていく。
風花を見ていると、対から次へと後悔の念が押し寄せ、劉は身を更に硬くした。
「劉〜!そんなとこに突っ立ってどうしたんだよ」 
聞きなれた自分を呼ぶ声に、劉ははっと時間を引き戻された。
「あ・・・アニキ、こっちや!」 
弾かれたように劉が龍麻の側へ駆け寄る。
「ゴメンな、どうしても探している本が有って、時間を忘れてちゃって。寒かっただろ、劉?」
そう顔を覗き込まれて、その笑顔に釣り込まれて劉も笑う。
「せやな。でもそれよりわい腹減ったわ〜。アニキは大丈夫なん?」
「ああ、俺は見てのとおりエネルギーまだ有り余っているから。でも劉がお腹空いたなら何か食べて帰ろうか」
…それは無理があるんとちゃうか?と劉は心底で呟く。どうみても劉の目からは龍麻の顔は青白く、舞っている風花のように透き通ってしまいそうに写った。
「劉?俺は心配しなくたって大丈夫だって!また眉間にしわ寄せて…ほら、癖になるよ?」
ひょいっと背伸びされ、劉はおでこを弾かれる。
「…なんで、分かるんや?」 
その途端、龍麻は声を上げて笑い始めた。 
「だ、だって劉直ぐに顔に出るから」 
劉はちょっとむっとして、龍麻のほっぺたを軽くつねった。
龍麻は劉ががつねっている手の上に、そっと手を添えた。思わず反射的に手を引こうとする劉を、龍麻は思わぬ力で引き戻す。
「怒るなよ。きっと俺にしか分からないから」 
「だ、だってアニキはわいは直ぐに顔に出るって…!」 
龍麻は目を細めて笑う。そして明後日の方を向いたまま呟いた。

「きっと、いつも一緒にいないと分からないよ」

「…っ!」
劉は思わず龍麻の肩をがっちりと掴んでいた。しかし龍麻は劉の方を向こうとはせず、意地でも首を動かそうとしない。
それは劉にとって、こんな風に聞こえたのだ。
「俺は劉といつも一緒にいるだろ?」と。
一時置いて、やっと劉の方を見た龍麻が、にこっと微笑んだ。
「じゃあ、ご飯食べて帰ろうか?お腹空いたよね」
上手く逸らかされたような気がした劉だったが、言う通りなので龍麻の右隣に並んでイルミネーションの街へと足を運んだ。
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