+徒然小説+

□陽炎(魔人学園)
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京一は、いつも一緒にいようと言う。
俺の背中を預けられるのはお前だけだと。
本当だったら、俺も嬉しくて仕方ないのだけれど。
それは言えない。言ってしまえば、今まで押さえてきた物が全て崩れてしまう。
もう壊したくないから。ずっと京一を見ていたいから。
この位置を譲れない。もう離れる事など出来ないのだから。
そんな俺に京一は気がついているのだろうか。
そっと横目で眺めると、京一の紅い髪が日の光を受けて
夕焼けにたなびく雲のように揺らめく。
もしかしたら、夢でも見ているのかもしれない。
そう、そんな幻想的な光景のように思えた。






不安そうに見上げたのが伝わったのだろうか。
京一は俺の視線を受け止めて、少し眉根を寄せた。

「戻って来いよ、ひーちゃん」

「何故だよ?俺はここにいる」
そっと短ランの裾を掴む。まだ手に触れる自信は俺には無い。
そう言っても、京一は寂しそうに口元を歪めただけだった。
そしてそっと俺の髪を梳いた。
そのまま掌を顔のラインに沿ってするりと落とし、俺の顎を捕らえる。

「ひーちゃん。待ってるぜ」

その言葉を押し込むように、京一は重ねるだけのキスをした。
俺は驚く…どころか、自然に受け入れている。
嬉しいはずなのに、そんな自分にも少し違和感を感じていた。
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