+徒然小説+

□矛盾(おお振り)
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このままじゃいけないのは分かってる。
三橋がこんなにスムーズに喋るのはおかしい。
明らかに興奮しているのが伝わってくる。
三橋がベンチの応援に戻る・・・その目にうっすら涙を浮かべて。
オレも知らないうちに目の縁から零れそうになった雫を慌てて抑えた。

その一言は、予想してなかった。

ましてや元希さんと組んでいた時は、言われることなんて絶対想像しなかった言葉。
でも、どこかでオレはその言葉を焦がれて居た様な、気がする。
やっぱりこれで良かったんだ。今までの自分を変えるのは躊躇いがあったけど。
オレは変えられたのか?
野球に対する思いを。
どうして・・・野球が、オレのものだなんて考えていたんだろう。
多分、今まで一人だと思ってきたから。
でもそれは三橋によってあっさりと突き崩された。



オレは、こんな風に誰かと一緒に野球をやりたかった。
きっと元希さんの時だってそうだったんだ。
目の前に写るエースナンバーをつけた背中。
このエースがオレに新しい世界(野球)を築き上げていく。
オレに新しい世界(野球)をくれる。
それはオレに新たな気持ちを呼び起こした。



こいつのために、何かしてやりたい。

こいつのために、何とかしてやりたい。




・・・三橋と、新たな世界が見たい。
甲子園のマウンドという未知の世界を。



一緒に高みを目指して上る幸せ。
かつては苦みも甘さも一人で味わっていた。
今は隣にもう一人。
肩を並べて・・・二人で同じ方向を見つめている。





オレは、持てる全てを持って三橋に尽くす。
だから今は、三橋のハイを何とかしないと。
顔を火照らせて、オレをまっすぐ見て、自分の思いを言ってくれた三橋を止めないと。

・・・この時間から抜けださなければ。









でも、このまま・・・少しだけ時間が止まってもいいと、思った。
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