+徒然小説+

□かのために(幻水3)
4ページ/5ページ

明くる朝、またごとっという音で目が覚めた。
またかなと思い、ゆっくり体を起こすと目の前に白い見事な尾。
「よう、お目覚めか」
「…ジョー軍曹」
「真の紋章を宿すと、身体に大きな負担がかかるらしい。それでヒューゴも今まで目覚めなかったんだろうな」
「…」
ふうと俺が息を吐くと軍曹はニヤッと笑った。
「…てな訳でもないのか?眠れる姫に様子を見にきた王子さまでもいたのか、ん?」
昨日のゲドの仕草を思い出し、俺は慌ててドアのノブを掴んだ。
「行こう!軍曹」
俺の顔をじっと見て、再び軍曹はニヤッと笑い頷いた。
「おう、すべてはこれからだ、英雄殿」
俺は軽く軍曹を睨みつけて、宿屋の階段を上がっていく。
駆け抜ける俺の背に、視線を感じて。
背を向けたまま、視線を感じた方に軽く手を振った。
そう、すべてはこれから。
あの時伝えきらなかった言葉を伝えるためにも、今は戦う。全ての想いを剣に乗せて。
――― 伝えたい事があるんだ。あなただけに。
背の向こうの彼が笑ったような、気がした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ