+徒然小説+

□刹那の輝き(魔人学園)
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何処をどう歩いたのか。
足を動かしていたのは憶えているけど、周りの景色などはすっかり頭の片隅からも消えている様だった。
気だるい体を起こすと、見なれないカレンダーが目に入る。そうか、今日は僕の誕生日…か。
さやかちゃんにも、さっき綺麗な包みを渡されたっけ。
でも、ここは…?
「霧島。大丈夫か?着いた途端に玄関に倒れこんだからびっくりした」
綺麗なテノールの声が頭の上から降ってきて、思わず仰ぎ見た視線の先には…龍麻先輩。
手にはアイスティーのグラスを2つ持っている。
「ほら、冷たいぞ」グラスをぎゅっと僕の手に握らせる。その感触に、ようやく僕の思考が復活し始めた。
「ここは…どこですか」こくりと喉を鳴らしてアイスティーを飲む。まるで滝の流れの様に、僕の喉を急速に潤してくれた。
「俺の下宿。結構真神から近いし、お前は歩くの辛そうだったからここにした」
そういって龍麻先輩はテーブルを挟んで座り、僕と向かい合った。
「すみません…ご迷惑おかけして」僕はペコリと龍麻先輩に頭を下げる。
「そんなに畏まらなくてもいいよ。俺達仲間だろ?歳はちがくても、さ」
そう言って龍麻先輩は微笑んだ。
「でもやはり先輩は先輩ですから」僕は慌てて手を振った。
「それに…僕とさやかちゃんの恩人ですし」
不意に龍麻先輩の顔が曇った。僕…何か悪い事言ったのかな。
「そんなの霧島が気にする事ないんだ。それに結果俺達は仲間になれた。それで十分じゃないのか?」
「じゃあ、先輩。僕にも…」言いたい事があります、と龍麻先輩に告げる。
僕は込み上げてくる感情そのままを、龍麻先輩に言葉に換えてぶつけた。
「僕にも…龍麻先輩の本音を見せて下さい。確かに僕は他の人達よりも遅く、先輩と知り合いました。
でも、先輩は何処か僕と違う場所にいる様で・・・。お願いですから自分で何でも抱え込まないで下さい。
僕にも京一先輩達の様に、何でも話して下さい。そんなに僕が頼りないですか・・・?」
−僕にもその笑顔を見せて下さい。京一先輩達に見せるようなあの笑顔を…−
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