放浪大戦黙示録
□第五頁
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エイジ「先はまだまだ長いなぁ……」
ヱルセリオン内部の自室で呟く。その声はどことなく暗い。
目の前には昨晩回収したエレメンタルストーン。大きさは角砂糖1/4以下、資料にはエレメンタルストーンは元々野球ボール位の大きさの丸い石で4つあるらしい。
先が長いと言うのも頷ける。
副長「艦長」
エイジ「ん?どうかしたの?」
副長「第128次修復計画の纏めが終了しました。如何致しますか?」
エイジ「ありがとう。現在の艦の復旧状況は?」
副長「ハ!現在、復旧率は76%。大破した第二、第三補機は新造し、交換した方が早いですね」
エイジ「そう、補機に関してはダウンサイシングして何かに使えないかな?」
副長「それも考え、幾つかプランも立案して起きました。詳しくは報告書に添付しておきました」
エイジ「毎度ありがとう。みんな働き詰めで疲れてるだろうから、10日の休みを置こう。その間に復旧に当たっていた近衛シズラー部隊にはフルメンテをお願い、副長ももうそろそろフルメンテが必要でしょ?暇がある時にフルメンテに入っていいから」
副長「了解しました。ですが艦長を差し置いてフルメンテに入るなど…」
エイジ「こっちは簡易メンテを定期的にやってるから大丈夫さ」
副長「了解しました。では、そのように」
回線が切れ、送られて来た報告書に目を通す。縮退炉を使って……
エイジ「あ、ありえねー」
確かに有効な利用法だし、低下している戦力も大幅にカバーできる。だが懸念事項が幾つか……
エイジ「……そろそろ朝食だし、この辺にしとこう」
エレメンタルストーンを金庫に入れ、転移で自宅のリビングに跳ぶ。
エイジ「な、なんじゃこりゃ?」
リビングに転移し、視界に映ったのは美少女達の寝顔だった。
昴「あ、お帰りなさい、エイジさん」
エイジ「た、ただいま。それよりどういう状況なわけ?」
台所の方から出て来た昴に状況の説明を頼む。何せリビングには雑魚寝しているシア、ネリネ、なのは、フェイト、はやて、カノン、ルル、その真ん中にリィン、そして部屋の隅には座って寝ている稟とその肩に寄りかかるように眠る楓がいた。
昴「昨日の今日ですから、緊急で呼び出された王様達以外のみんなには泊まってもらいました」
エイジ「そう……でも何故に雑魚寝?」
昴「いや、エイジさんの部屋は、その……」
エイジ「???」
なにか言い難そうに言葉を濁す昴。
昴「わ、私は何も見てませんよ!?ええ、はい。エイジさんがどんな趣味をしていようと、私はエイジさんの味方ですから」
一体なんのことやら?
「エイジくん♪」
ウィーン♪
エイジ「アハハハハハ♪聞こえない、聞こえないよ♪うん、聞こえないともさ!この重低音、鉄の擦れる音、仄かに香るガソリンとオイルの香りなんて、耳に聞こえがいい鈴の音の様なソプラノの声なんて」
そう言いながら後ろを振り返れば、2つのチェーンソーを横に連結させたデュアルソーを両腕に持ち、それを唸らせる黒い長髪の美少女がいた。
エイジ「………おはよう、言葉」
言葉「おはよう、エイジくん♪ちょっと、私と2人きりでお話ししましょうか?」
命の灯火が消えない事を切に祈り、エイジは言葉に連れられて二階へと上がった。
エイジ「ちょ、やめ!洒落になら――」
言葉「大丈夫ですよ、エイジくんは殺しても死なないんですから♪」
ウィーン♪ウィーン♪ウィーーーーン♪ザシュッ♪
エイジ「ヒィッ!ぎやああああああっ」
言葉「うふふふ、あはははは、あははははは♪」
昴「あ、あれが、ほ、本物のヤンデレか……」
なまじ耳が良かったりする昴には、肉や骨が断たれる音が聞こえたり、聞こえなかったり……
「言葉、やめて下さい。これ以上はエイジの精神が崩壊します」
言葉「あははははは、あはははははははははは♪」
「……失礼…」
ゴスッ!
言葉「はぅっ」
ごとっ
昴「おさまりましたか?」
「ご無事ですか?エイジ」
エイジ「は、はは、あはははははははははは――」
昴「エイジさんも大変ですね……」
「エイジ…!」
エイジ「っはΣ!?……うわあああああん!!ごわ゛がっだ、ごわ゛がっだよ゛お゛ぉ〜〜〜〜〜!!!!」
兎にも角にも、1日が始まるのだった。