進撃 小説
□進撃の巨人 18話
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『冷えてきたね・・・』
【ウォール・ローゼ】の領地に入った途端、気温がグンッと下がった。
【ウォール・マリア】よりも標高が高いためだ。
標高は【ウォール・シーナ】に近づくほど高くなり
その領地に達するころには標高差は千メートルになる。
季節にもよるが気温差なら5度ほどだ。
馬車は【ウォール・シーナ】へと続く幹線道路から脇道に入りひたすら北上を続けている
主要道から外れても【ウォール・シーナ】方面に向かっているのは変わらない
「工場都市って、まだまだ先なんでしょうか?」
コリーナは挙手すると、そんな弱音を漏らした
いまだにコリーナの顔色は悪いが出発直後に見せていた病的な青さではない
馬車の揺れに体が順応し始めているのであろう。
それはアンヘルとゼノフォンも同じだが、乗り物酔いが改善された一番の理由は馬車の速度を落としたことにあった。
勿論、そのように頼み込んだのだ。
ただそれと引き換えに、到着予定時刻に大幅な遅れが生じている。
トロスト区を出発して5時間になるが、工場都市の存在を示す建造物は一向に見えてこなかった。
もっとも確認しようにも、日はどっぷりと暮れているのだが
先導する二人の兵が松明で林道を照らしていたが
それは周囲を薄ボンヤリと浮かび上がらせるだけの頼りない明かりでしかなかった。
辺りにはヒノキや赤松、杉といった針葉樹しか確認できず
町や村も近くにはない。人通りは皆無である。
「急げば二時間で到着だ。ただし今のペースなら倍はかかる」
ソルムは手綱を巧みに操りながら、獣道にも似た狭い林道を先へ先へと進んでいく。
「吐き気に耐えるか、それとも、そういうわけですか。」
ゼノフォンはうんざりだと言いたげな顔をした。
それはアンヘルも同じである
「吐きすぎて干物になるのはごめんだな・・・」
「だとしたら辛抱するしかない」
ソルムはつっけんどんに言うとさらに続ける
「この暗さでは速度は出せない。工場都市の見学は無理だろう。
今のペースで進むのがベストじゃないか?」
ソルムの提案は愚痴だらけの面々を黙らせるだけの説得があった
「それじゃあ現地まで御者さんに任せて、俺は一眠りするか」
アンヘルが寝転がろうとしたとき、発砲音とともに馬がひいた。
馬車に急制動がかかり、アンヘルたちは荷車の中でつんのめる
積み込んだ荷物が派手にぶちまけられた。
『わぁ!』
「何があった?」
「頭を下げておけ、撃たれるぞ」
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