Series
□Orange
2ページ/3ページ
どれ位の時間が経っただろうか。
ふとエリンは視線を感じ、美しい橙の空から目を離した。
イアルを見ると、その瞳と目が合った。
見られていたと気づき、エリンの顔に少し熱が集まる。
「え…と、イアルさん、どうかしましたか?」
エリンがそう問うが、イアルはエリンをじっと見つめたまま、口を開こうとはしない。
「イアル…さん?」
語尾に疑問符をつけ、エリンがイアルの名を呼ぶと、イアルはエリンを見つめたまま、静かに口を開いた。
「…綺麗だと、思ってな……。」
微かに笑みを浮かべながらイアルが呟くようにそう言うと、エリンは笑って頷いた。
「私もそう思いました。今日の夕焼け空、とても美しいですよね。」
しかし、なぜかイアルは苦笑すると、エリンから目線を外し、黙ってしまった。
エリンはそのイアルの頬が微かに赤くなっていることに気づくと、不思議そうに首を傾げた。
「……イアルさん?」
エリンが訝しげに名を呼ぶと、イアルは少し困ったように眉を下げながら、ちらりとエリンを見、すぐに目線を外すと、口を開いた。
「…夕焼けではなく…、夕日の光を浴びた、エリンが……綺麗だと、思ったんだ……。」
小さく、呟きにも似たその声を聞くと、エリンはきょとんと目を丸くした。
しかし少し間を置き、その言葉の意味を理解してくると、エリンは自身の顔に熱が集まってくるのを感じた。
「……え…?」
困惑し、どうしたらいいか分からなくなっている、真っ赤に染まったエリンの顔を見て、イアルは微かに苦笑した。
互いに無言で二人が空を見上げると、夕陽の光で橙色に輝く茜雲が、ゆっくりと空を流れていた。
Orange
(橙に染まった茜雲)
(貴方が居てくれるから、余計に美しく見えてしまう)
→アトガキ