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□ある花々の香り
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イアルとエリンは、二人でゆっくりと草の上を歩いていた。

小屋から随分と離れた所まで二人で来たのは今回が初めてで、エリンの顔には自然と笑みが浮かんでいた。



突然吹いた風に、エリンは慌てて髪を押さえた。


隣に居たイアルも軽く目を細め、口を開いた。


「…凄い風だな。」

エリンは頷くと、先程の風に乱された髪を整えながら、目線を上げた。


ふと、エリンは声を上げた。

「これ…、どこから飛んできたんでしょうか?」


その言葉を受けて、イアルはエリンの見ているほうを見た。


新緑の草の上を、何かがひらひらと舞っている。

鮮やかな色をしたそれらは、何らかの花の花弁だった。


イアルは辺りを見回し、どこからきたのかを探った。

そしてある一点を見つめ、指を指した。

「エリン、あそこじゃないか?」


「え?」


小さく声を上げたエリンはイアルの指差す方を見、驚いたように眉を上げた。


エリン達から離れた所にある木々の隙間から、微かだが鮮やかな色が覗いていた。

その色は草の上で舞っている花弁と、よく似ているように見える。


「イアルさん、行ってみましょう!」


瞳を輝かせてそう言うエリンに、イアルは微笑を浮かべて頷く。

それを確認して、エリンは駆け出した。

イアルもその後を歩いていった。


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