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□振り向けば君が
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見上げたエリンと目が合うと、イアルは黙ったまま微かに笑みを浮かべた。


「代わろう。寝台へ運んでくる。」

静かにイアルが言い、エリンは数回小さく瞬きをした。


エリンは暫くじっとイアルを見つめ、やっとのことでそれがジェシのことを言っているのだと気付いた。

「…あ、はい、」

お願いします、と言いながらエリンはジェシを慎重に上げ、イアルの前へ差し出した。


一つ頷いたイアルは、ゆっくりとジェシを腕の中から持ち上げ、優しく抱きかかえた。

ずり下がってしまった、ジェシにかけられている薄手の布を肩までかけなおし、頬にかかった髪を静かに退ける。


如何にも父親と感じさせるそのイアルの動作に、エリンは自然と笑みを浮かべていた。



緩やかに歩き出したイアルの後を、エリンは半歩ほど下がって付いていった。

イアルの腕の中のジェシは安定していて、ぐっすりと眠り込んでいる。


やがて寝室の扉の前に着くと、エリンは意識して扉をそっと静かに開けた。


扉が開くと、イアルはジェシを起こさないよう気を遣いながら寝台に近づき、ゆっくりとジェシを寝台に寝かせた。

横に寄せてあった毛布を手に取り、それをジェシの身体にかける。


何気なくイアルが髪をそっと撫ぜれば、その小さく開けられた口から微かに声を漏らした。

イアルの目の端に、傍らに来たエリンが柔らかな笑みを零すのが映った。


暫くするとイアルはジェシから手を離し、次いで横を向き、エリンの顔を見た。

イアルを見て微笑んだエリンに、イアルも口元を緩めて小さく笑い返した。



  振り向けば君が
   (幸福とは、こういうことをいうのかもしれないな)


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