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□静かな平穏
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「―…イアルさん、ありがとうございます。」
次いでエリンはそう言い、イアルに微笑んだ。
唐突にそう言われた為、イアルは意味が理解できなかった。
「こうして共に居てくださって……、ありがとうございます。」
エリンが付け足すと、イアルは数秒置いて小さく目を細めた。
「……礼を言わなければならないのは俺のほうだ。
エリンは俺に、この日々を与えてくれた。」
イアルはエリンから目を離して前を向くと、静かに目を瞑った。
暫くしてエリンも目を瞑ると、ゆっくりと澄んだ空気を吸い込んだ。
頭上で木の葉が擦れる音と鳥の囀る声、隣で聞こえる息遣い以外は何も聞こえてこない。
「―…静かですね。」
エリンは小さく呟いた。
「……そうだな。」
イアルは小さく答えた。
静かな平穏
(時が経っても、この日々は変わりませんように)
→アトガキ