七松家の奥様

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【滝姫と三之助】






ピロリン、ピロリン〜♪


学校の帰宅途中、突如俺の携帯が鳴り出した


「メールか?」


今日うちで遊ぶ事になって一緒に帰宅していた作兵衛(富松家も俺の家と同じ方向だけど)が携帯音に反応して声を掛けてきたから頷いた


「あ、」


姉貴からだ


俺は立ち止まってメールを読んだ










宛名/姉貴
件名/三之助へ
内容/
授業お疲れさま。
今ちょうど学校帰りだろ?悪いけどお母さんに頼まれたものがあって持って行って欲しいから帰り際、家に寄ってくれ。頼む。
滝姫より。










読んでから俺はため息をついた


世話の焼ける姉だ…


多分この時間だと金吾達が帰ってくる頃だし、家の事で忙しいだろうから仕方ない


と思いながらも俺の指は慣れたように素早く「わかった」の一言を打ってメールを送り返していた


他でもない姉である滝姫からの頼みなら引き受けないわけにはいかない


俺の家から学校に行くまでの道程は姉の家の近くを通るから別に面倒でもないし


送信して携帯を閉じながら隣で俺を待っている作兵衛を見る


「終わったのか?」


「あぁ。あのさ…うちに行く前に少し寄りたいとこあるんだけど」


「俺は構わねぇけど?」


どこだよ、


聞かれた俺は苦笑い気味にこう言った


「姉貴ん家」































姉の家に着いてから俺は躊躇いもなくチャイム無しに中に入った


「おーい、姉貴ー?」


リビングに顔を出すと姉は食卓テーブルで何かを包んでいた


「あ、もう来たのか。随分早かったんだな」


「ん。たまたま近くにいたから」


「そうか、それはタイミング良かったな」


「つかもっと早く連絡しろよ」


「それは家に帰ってからお母さんに言え。私だって急だったから作るの大変だったんだぞ?」


姉貴の言葉に首を傾げた


作る?


「何頼まれたんだ?」


俺の疑問に姉はおかしそうにクスクス笑いながらさっき包んでいたものを俺の手に渡した


「ショートケーキ。何か突然私が作ったものが食べたくなったのだとか」


あぁ、なるほど


理解した俺も肩を竦めて笑った


うちの母親は姉の作るデザートが大好きだから、また今回も急に連絡してきたのだろう


たわいもなく談笑していると玄関で待っているだろう作兵衛から「三之助ー?」と名前を呼ばれた


姉に夢中ですっかり彼を忘れていた


「もう行く。これから作兵衛と家で遊ぶ約束だから」


「作兵衛?…あぁ、実家にいた時何度か会った事があったな」


「うん。よく家に来るんだ」


「じゃぁちょうどいいな。ケーキ、1ホール作ったから帰ったら作兵衛にも食べさせてやれ」


「そうする」


包まれたケーキを持って玄関にいくと作兵衛に軽く「遅い」と文句を言われた


でも見送りのためにリビングから出てきた姉貴を見た瞬間急に人が変わったみたいに背筋よくして「こ、こんにちはっ!」て挨拶するのは見物だった


まさかうちの姉さん意識してるとか?


いくら作兵衛でも姉貴はやれねぇ


てか既にもう小平太兄のもんだけどな


俺と作兵衛は姉貴に見送られて家から出た


「寄りたい理由って、それか?」


作兵衛が俺が抱えているものを見る


「母さんに頼まれたショートケーキだって。…作兵衛の分もあるから家行ったら食おう」


姉貴のは甘党じゃない俺でも食べられるから、


「へぇ、楽しみだな。手作りケーキなんて初めてだ」


「…言っとくけど、姉貴のケーキ食ったら他の店のやつ食えなくなるぞ?」


「そんなにか?!」


作兵衛の驚き様に笑いながらケーキを大事に抱えて帰った






















やっぱり滝姉の作ったケーキは美味しかった


(また作ってもらおう…)













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