青学

□ありったけの愛で
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「乾先輩」

…と、名前を呼んだものの、海堂は困っていた!

(…やっぱり、チョコのお返しはするべきだよな…。でも、何やったら良いんだ…ι)

散々考えた海堂だったが、乾が喜ぶ様な物が浮かばなかった。
同じ立場にいる氷帝の跡部に、コッソリ探りを入れようとしたが、あっさり見抜かれてしまい、『簡単じゃねーの。自分で考えるんだな』と突き放されてしまった。

(どこが簡単なんだ!?)

本気で焦り始める海堂。
その横では、海堂を不思議そうに見つめる乾。

「どうしたんだ、海堂?」
「あ…いや……」

もうすぐ2人で居る時間も終わる。
それまでに何とかしなければと、脳みそをフル稼動させる海堂。

(簡単な事…簡単な事……)

乾が喜びそうな物を次々に思い浮かべていったが、あるものが浮かんだ途端、海堂は自分の脳みそを疑った。

(…まさか……)

「…乾先輩。先月はチョコ…有り難うございました。それで…お返しなんスけど…何か欲しいものとか…有りますか…?」

違っていて欲しいと願いながら、海堂は乾の回答を待つ。
しかし、乾の口から出たものは、海堂の予想とは違っていた。

「いや…これといって欲しいものは無いな。それに、お返しなら昨日もらったしね」
「昨日…」

海堂は昨日の出来事を思い返す。
そして、ちょっと恥ずかしくなる。

「アレで俺は充分だよ」
「………ι」

めくるめく“メイクラヴ春場所”をリアルに思い浮かべた海堂。
そして、思いっ切り恥ずかしくなる。
その“メイクラヴ春場所”こそが、つい先程海堂の脳裏に浮かんだ“乾が喜びそうなもの”であった。

充分どころか、余分にお返しをした様な気もする海堂。

海堂の考えを察したのか、乾はこんな事を言った。

「余分にもらった気もするから、その分は君の誕生日に回そうか」


誕生日も2人で過ごそう。

乾は最後にそう言った。




−END−

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