氷帝

□happiness.
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「なぁ跡部」
「アン?何だよ?」
「今日、何の日か分かるか?」
「月曜日」
「………」

今日は、3月14日。
つまり、ホワイトデー。
忍足は、わざわざ俺のクラスに出向いて、遠回しに“お返し”を催促している。
俺は、それに気付かないフリをする。

「先月、跡部にチョコやったやん…」
「チョコ以外のモノももらったけどな」
「まだ根に持っとるん?しゃあないやん、跡部可愛かったんやもん…。別にエエやんか…」

俺は、横に立っている忍足を睨んだ。
次の日、どれだけ辛かったと思ってんだよ…。
つーか、何回ヤりゃあ気ィ済むんだよ。

「“誰が男にチョコなんざ贈るか”言うから、俺がお前にチョコ贈ったんやで…。お返し…くれたってエエやんか…」
「………」
「別に“ヤらして”言うてる訳ちゃう「うるせぇ…」



俺は座ったまま、横に居た忍足の腰に片腕を伸ばして、忍足を引き寄せた。

「…跡部…?」
「うるせぇ。黙ってろ」
「何…もしかして甘えとるん…?跡部からやなんて、珍しいやん…」
「………」

忍足は俺の顔を覗こうとする。

…見るんじゃねぇよ…。

「あんなぁ…甘えてくれるんは嬉しいねんけど…」
「………」
「…襲いたなんねんな…俺」
「………!」

ちょうど1ヶ月前の光景が頭に浮かぶ。
アレは正直…さすがの俺もキツかった。

“愛やねん。溢れとんねん”

そう言った忍足。




「……好きにしろよ」
「え…景ちゃん…」
「景ちゃんって言うな。気色悪ぃ」
「…今言うた事…嘘ちゃうやろな…?」
「俺様の言う事が信じられねぇのかよ」

忍足が俺の頭に腕を回した。

「跡部…ごっつ可愛え…」
「…うるせぇよ…」
「うるさい言われても俺は言うで…?」

忍足の顔は見えないが、何となく笑っている気がした。


「…溢れてんのはテメェだけじゃねぇんだよ…」



★━━━・・・‥


この想い
言葉で表せないならば
態度で示そう

溢れる想いを
体ごと
包んでもらおう



「今日、跡部んち泊まってエエ?」
「勝手にしろよ」




† END †

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