氷帝

□可愛い恋人
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『今すぐ家に来い』

「いきなり何やの、景ちゃん?…怖い夢でも見たん?」

『Σな…っ、違う!いいから来い!』

「ハイハイ(可愛ぇなぁ…vV)」






夜の7時過ぎやったけど、姫の頼みやし、俺は急いで景ちゃんちに行った。

うたた寝して、怖い夢でも見たんやろなぁ…。



こら添い寝したらなアカンな。うん。



念のために、制服とか持って出てきたしな。
準備エエやん、俺。




念のために、勝負パンツに履き替えてきたしな。
準備万端や、俺。








せやけど……










「……何だ、その荷物。家出でもしたか?」

「ちゃうわ…。景ちゃんのためや」

「何で俺のためになるんだ?」

「怖い夢でも見たんちゃうかなー思て。添い寝したらなアカンなー思たから、お泊まり」

「…頼んだ覚えは無え」






つれない応対やった…。






不審者を見るかのような顔で俺を眺める景ちゃん。


「ずいぶん手の込んだ冗談だな」

「至って本気やねんけど」

「………」


持ってきたバッグをソファの隅に置いて、その横に座る。
景ちゃんは、立ったまま俺を見下ろす。


「…で?どうなん?」


「…忘れてんのか、自分の誕生日」

「……今日、15日やった?」

「………ι」


盛大に溜め息ついた景ちゃんは、俺の隣に腰を下ろして、更に言うた。


「ケーキ作らせたんだが、いらねえみてえだな「食う食う!めっちゃ食う!!」


慌てて言うて、景ちゃんを抱き寄せる。


「景ちゃんが用意してくれたケーキやからな、絶対食べるで?」

「俺が作ったワケじゃねぇけどな」

「それでもエエやん。めっちゃ嬉しいで?景ちゃん大好き…vV」

「…………ι」





……あれ…





「景ちゃん…」



体を離して、景ちゃんを見る。

思た通り、その綺麗な顔は……




「顔、赤いで?」

「Σ見るんじゃねえ!!///」

「エエやんvV ホンマ可愛ぇなぁvV」

「調子に乗ってんじゃねえよ……!」


立ち上がりかけた景ちゃんの腕を掴んで、また座らせる。

離れんように、手を握る。


「今日、俺の誕生日やし、傍おって?」

「〜〜〜〜ッ!!///」


俺の手を振りほどく。
せやけど、観念したのか、逃げる様子はない。
腕組んで、脚も組んで、照れを誤魔化すように、勢いよく背もたれに体を預ける。







ホンマに…





「なに見てやがる!」

「幸せやなー思てvV」





可愛ぇわ、この子…vV












それから間もなく、シェフが部屋にケーキ持ってきてくれて、誕生日おめでとう言われた。
グラスにジュース注いでくれて(もちろん景ちゃんの分も)、ケーキも切り分けてくれた。

直接シェフに、こんな事をしてもらえるやなんて、滅多に出来ひん体験やな…。



「ホンマに食うてエエの?めっちゃ豪華やねんけど…」

「アン?お前が食べなきゃ誰が食べるんだ?…遠慮すんなよ。らしくねえ(笑)」


景ちゃんが、グラス片手にククッと笑た。

滅多に見られへん、屈託ない笑顔。


「…やっぱり可愛ぇな、景ちゃ「さっさと食え」






──そうして。



お手製のケーキ食うたり(美味やった…)、シェフと話したり、景ちゃんの笑顔ぎょーさん見られたり…

めっちゃ楽しい時間を過ごした。






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