氷帝
□目眩
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「跡部」
聞き慣れた声が俺の名を呼ぶ。
振り向くと、そこには忍足がいた。
俺に笑顔を投げかけて。
「ちょお付き合うて」
「…アン?今かよ?」
「今やったらアカンか?」
その笑顔。
何だかんだ言っても
結局逆らえない、笑顔。
「…分かった」
そんな自分に
内心、舌打ち。
「おおきに☆」
そう言って、俺の横に立つ。
忍足の声が、俺のすぐ横から聞こえる。
「ほな、行こか」
そう言って、先に歩き出す忍足の後ろ姿を、俺は黙って見つめた。
陽に当たった黒髪は、深い青に変わる。
ポケットに手を入れて、ゆっくり歩く後ろ姿。
その背中と
「跡部」
振り向きざま
俺の名を呼ぶ
その声に
俺は目眩を感じる。
†